新型コロナウイルス禍が落ち着き始め、企業業績への影響も緩和されてきた。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった難題がいまだに日本企業を苦しめている。その状況下でも、企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は富士通、NTTデータなど「ITベンダー」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
NTTデータは50%超の大増収
富士通はわずか3%台だが…
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のITベンダー業界4社。対象期間は2022年11月~23年3月の直近四半期(4社いずれも23年1~3月期)としている。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・富士通
増収率:3.2%(四半期の売上収益1兆770億円)
・NTTデータ
増収率:54.1%(四半期の売上高1兆841億円)
・野村総合研究所
増収率:7.6%(四半期の売上収益1761億円)
・NEC
増収率:13.7%(四半期の売上収益1兆438億円)
ITベンダー4社は、いずれも前年同期比で増収となった。中でも、NTTデータの四半期増収率は5割超と突出している。
前四半期の記事でも解説した通り、このNTTデータの大幅増収は、NTTグループにおける海外事業の再編によるところが大きい。
NTTグループでは22年10月1日付で、NTTデータの海外事業と、海外でデータセンターやネットワークを手掛けるNTT Limitedを事業統合し、新体制へと移行した。
今回分析対象とした23年1~3月期は、NTT Limitedをはじめとする複数の海外企業を傘下に収めたことによる新規連結効果が働いた。
そうした理由でNTTデータが大幅増収を果たした一方、ITベンダー4社の中で最も低かった富士通の増収率は、わずか3%台にとどまった。
これまでも本連載では、ITベンダー業界内では売り上げ・利益に“格差”が生じやすいことを指摘してきた。23年3月期は通期累計決算においても、NTTデータの増収率は前期比36.8%増、富士通は3.5%増と大きな差がついた。
だが実は、増収率で苦戦した富士通は利益面が好調だった。何しろ、23年3月期の営業利益(通期累計)が前期比53.1%増に拡大し、「過去最高」を更新したのだ。
売り上げが伸び悩んでいた富士通の増益要因は何か。NTTデータの海外事業を除いたセグメントは果たして好調なのか。次ページでは、この2社の動向を中心に、各社の増収率の推移について解説する。