デジタルトランスフォーメーション(DX)の追い風が吹く中、ITベンダー業界のトップアナリストである大和証券の上野真氏は、5年後の主役が「売上高数兆円クラブ」の超大手企業群になると予想。一方、新興企業群は最大の武器である時間的な先行者利益を失いつつあり、二極化が不可避だと見通す。特集『円安・金利高・インフレで明暗くっきり! 株価・給料・再編 5年後の業界地図』(全24回)の#4では、大手ベンダーや新興DX企業が入り乱れるITベンダー業界の5年後を徹底予測した。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
新興DXは成長の壁に直面か
5年後は大手が有望な理由とは
「新興DX企業は3~5年で成長の壁に直面する恐れがある」――。ITベンダー業界のトップアナリストである大和証券の上野真氏は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を追い風に高成長を続ける新興IT系企業の先行きに、慎重な見方をにじませる。その代表例は、ベイカレント・コンサルティングやSun Asteriskといった企業だ。
一方、本特集のテーマである5年後を見通すと、業界は二極化が進行し、「主役は『売上高数兆円クラブ』の超大手企業群になっているだろう」と見通す。
その理由は次ページで解説するとして、そもそもこの数年を振り返ると、コロナ禍も事業のデジタル化を後押しする形で、ITベンダー各社にはかつてない好環境が訪れてきた。その恩恵は、大小問わずSIer(システムインテグレーター)やIT系コンサルティング会社などに広く及ぶ。特に特定分野のニーズに強みを持つ新興DX企業では急成長につながるなど、空前のブームに沸き立ってきたのだ。
何しろ東京都内でタクシーに乗れば、今や後部座席の画面で新興DX系の動画コマーシャルを見ない日はない。
だが、上野氏の見立てでは、これまで構造改革を続けてきたNECや富士通など大手SIerが再成長のフェーズに入るほか、NTTデータや野村総合研究所といった数年来の勝ち組大手は、さらに盤石な立ち位置を確保する。
近年は顧客を囲い込む「ベンダーロックイン」があしき慣習として猛烈に批判されていた大手が大復活するとは、どういうことなのだろうか?
一方、新興DX企業では先行者利益を喪失し、先々の成長性には黄信号がともるというわけだ。
ITサービス業界は今や、日本有数の成長セクターだ。だとしたら、このくっきりとした明暗は投資を考える際も、就活や転職で働く先を考える上でも、多くの人にシビアな影響が出かねない大問題といえるだろう。
なぜこの先は二極化という大きな変化が起き得るのか。
次ページ以降、主要ITベンダー各社の予想利益や年収のデータを比較した上で、上野氏が「勝ち組になる」と考える有望企業6社の具体名を提示。二極化が不可避の理由を明快に分析する。