「病気になりたくない」というのは、すべての人に共通する願いです。しかし、病気にならないためにどんな行動をとるべきなのかは「よくわからない…」という方が多いのではないでしょうか。
そんななか、「科学的に正しい」健康習慣の身につけ方を明かした、公衆衛生学者・林英恵さんの最新刊『健康になる技術 大全』が話題を呼んでいます。世界最先端のエビデンスをベースにした「健康に長生きする方法」を伝授する本書に、読者からは「健康関連本としてはブッチギリのベスト」「一家に1冊置いておくべき」と激推しの声が続々と届いています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、実は「死ぬ」原因にもなる“絶対NGな悪習慣”を明かします 。
監修:イチローカワチ(ハーバード公衆衛生大学院教授 元学部長)
「体を動かさないクセ」が死ぬ原因になるかもしれない
運動というと多くの人がカロリー消費、つまり太らないために必要と考える人もいるかもしれません。しかし、食べたものを消費することだけを目的に体を動かすのであれば、運動は割に合いません。
例えば、体重50キロの人が6メッツ(※)の運動強度で30分間運動した時のエネルギー消費量は、150キロカロリーです。これは、白米のご飯100gあたり168キロカロリー(子ども用茶碗くらい)の消費にも満たない量です(*1)。
それでは、なぜ、運動しないといけないのでしょうか? それは、運動しないと、人間が「死ぬ」原因にもなるからです。
体を少し動かすだけでも死亡リスクは下がる
どのくらい死ぬリスクが増えるのでしょうか? 仕事以外の余暇の時間で、散歩やジョギングなどで体を動かす量と死亡リスクについての研究があります。体を動かす量が多いと、全く体を動かさない人に比べて、死亡リスクが20~39%低いことがわかっています(*2,3)。
大事なポイントは、「体を動かすのはたとえ少しだとしても、全く動かさないよりは死亡リスクが下がる」「体を動かす量がとても多い人でも、全く動かさないよりは死亡リスクが下がる」ことです(ただし、多すぎには注意)。
実際、運動することのメリットは、体の機能に関するものと精神的なものがあります。前述の通り、体を動かすことは死亡率全体や循環器系の疾患の死亡率の低下と関連しています(*4,5,6)。心臓病や大腸がんや乳がん、糖尿病、高血圧、骨粗しょう症や肥満、腰痛や転倒による骨折などのリスクの予防にもなります(*4,5,6)。
また、筋肉をつけることで、エネルギー消費量が増え、脂肪が減りやすくなります(逆に筋肉量が少ないと、エネルギーを使わないので脂肪が減りません)(*7,8-10)。
身体だけでなくメンタルの健康にも好影響
ストレスや不安を減らしたり、うつの予防に効いたりするのに加えて、うつや気分障害に関しては、治療の一環としても役に立つといわれています(*6,11)。最近では、認知症の発症リスクが低いことや、脳の機能が保たれることなどもわかっています(*12-14)。
また、副次的な効果として、運動をすることで、人との交わりが起こることも大切なポイントです(*15)。たとえ、1人でも行えるジョギングやヨガであっても、グループでの練習に参加することで、人との接点が増えます。運動自体の利点に限らず、人と交わることは健康を保つ上でも、重要なポイントです(*15,16)。
「動く物=動物」という言葉があるように、もともと人間は「動く物」の一種です。私たちの体は、長い進化の過程を経て動くことを前提として設計されています(*2)。
ところが、文明の発達や技術の進歩により、今まで動いて行っていた多くの家事労働や仕事も、動かずに多くのことをこなせるようになりました。一見便利になった生活も、健康の観点からするとマイナスの点も否めません。
少しでも多く体を動かせるように意識して日々過ごしましょう。
(本稿は、林英恵著『健康になる技術 大全』より一部を抜粋・編集したものです)