エンジニア出身の小池淳義氏(71)は、週末に休みが取れると、アメリカンフットボールの試合でテールバックとしてプレーするのが好きだ。小池氏は今、日本のために別の試合でボールを持って走っている。この試合は、多額の投資を伴い、世界の経済安全保障に関わるものだ。半導体を製造する国・地域の中で最下位近くまで転落した日本は、再びトップ争いに加われるチームを作りたいと考えている。小池氏は新たな半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」を率いる。同社は5兆円を投じて北海道に工場を建設し、現在の最先端である回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体を2027年から本格生産する計画だ。小池氏は今年、ジーナ・レモンド米商務長官とこの計画について協議した際、(アメフトの試合に例えて)自身のチームは、最後となる4回目の攻撃で残りのヤード数があと数インチ(fourth and inches)という状況にあり、リスクを取って攻め込もうとしている、ただし今回の試合は「残るはあと2ナノメートル(fourth and 2 nanometers)」だと説明。それを聞いたレモンド氏をはじめとする米当局者から笑いが起きたという。小池氏は最近のインタビューで当時をこう振り返った。レモンド氏は米国が日本の計画を全面的に支援すると小池氏に伝えた。