毎日当たり前のように使っている測定単位。とくに、体重など身近なものの重さを測るための「キログラム」は、日常生活で目にしない日はほとんどない。しかし、なぜこの単位が使われているのか知っているか、考えたことがあるだろうか。世界で多くの人が使っている測定単位「キログラム」は、2019年におよそ130年使われてきた定義が変わり、今日ではある領域の科学が進歩したことによって定義されている。そのキログラムの成り立ちを、『測る世界史 「世界の基準」となった7つの単位の物語』(朝日新聞出版)を抜粋、再編集し、解説する。
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重さの計測は「秤」から始まった
「重量」は商業取引の上で重要な指標となっている。
たとえば、原材料や食品などの取引は「(キロ)グラム当たりの単価」で行われることが多い。他方、宝石のように軽くて少量かつ、価値の高いものには「カラット」が使われることもある。ほかにも業界によって独自の重さを示す単位が使われる場合がある。
ただ、この場合の重さは、いずれも「量を比較する基準」として用いられている。
古来から重さを測る道具として知られているのは、「秤(はかり)」である。片方に測りたいものを載せて、もう片方に置いた基準(分銅)と重さを比較する。
紀元前2400年から紀元前1700年頃にさかのぼるパキスタンのインダス遺跡からは、すでに秤を使っていた形跡が見つかっている。
その後も、古代ローマやイングランド王国など、それぞれの地域ごとに、それぞれ重さの基準を定めて、連綿と測る作業は進められてきた。
そんな中、変革のときが18世紀に突然訪れる。日常生活でますます多くの人と関わるようになり、商業取引の範囲が広がっていくにつれて、重さの単位を統一していく必要性が出てきたのだった。
4度の水によって「キログラム」が定義される
1799年、革命期のフランスで、1キログラムの基準が定められた。そのときの定義は「水温4度のときの1立方デシメートル(1辺が10センチの立方体の容積)の水の重さ」である。水温が4度と限定されたのは、その温度のときの水は、密度が最大で最も安定した状態であるからである。