「不確定性」が、重さを「確定」させる不思議

「1kg」が100年間で0.00005g増えた!?キログラムの新しい基準は相対性理論と量子力学の世界『測る世界史 「世界の基準」となった7つの単位の物語』
ピエロ・マルティン (著), 川島 蓮 (翻訳)
定価2,420円
(朝日新聞出版)

 2011年10月21日の第24回国際度量衡総会。ついに、キログラム原器の廃止が決まった。人工物として作られた原器で、最も寿命が長かった。

 その代わりにもたらされたキログラムの新しい定義は、現代物理学の基本である「相対性理論」と「量子力学」に基づいている。

 そして、新たな定義には、新たな測定方法が求められる。そこで一役買ったのが、ワット天秤(キブル天秤)である。この天秤の基本的な仕組みは、数千年前からある秤と同じである。しかし、計測の際には分銅ではなく、電磁力を使用する。

 この電磁力の値は、量子効果を用いることで非常に正確に把握できるようになった。この超高精度な測定により、ついに現在に至るキログラムの定義は完成したのである。

執筆者:富山佳奈利(とやま・かなえ)
総合電機メーカー、宇宙航空研究開発機構(JAXA)等を経て、2016年よりサイエンスライターとして活動。数多くのインタビュー記事を執筆し、過去21冊以上もの書籍出版に協力した実績がある。
著者:ピエロ・マルティン
イタリアのパドヴァ大学の正教授。専門は、実験物理学(熱核融合)。物理学の進歩に貢献した人物として、アメリカ物理学会で「フェロー」に選出されている。国際雑誌に120本以上の科学論文を執筆し、パドヴァでのRFX 実験、欧州特別委員会の「ユーロフュージョン中型トカマク」など、大規模な国際研究プロジェクトの科学責任者を務める。
訳者:川島 蓮(かわしま・れん)
翻訳・通訳者、文化人類学およびジェンダー学研究者。オーストラリア国立大学博士号取得(PhD., International, Political and Strategic Studies)。NHKワールドニュース同時通訳、在日本メキシコ大使館、国連女性開発基金(UNIFEM、現UN Women)勤務、イタリアのローマ・サピエンツァ大学非常勤講師などを経て、今に至る。

AERA dot.より転載