芥川賞作家の高瀬隼子と
劇作家・演出家の鴻上尚史
瀬戸内海に面し、四国の西北部に位置する愛媛県新居浜市。背後に旧別子銅山を抱え、住友グループの企業城下町として知られる。その臨海工業都市にある県立新居浜西高校は、100余年の校歴を誇る伝統校だ。
卒業生の中から2022年、芥川賞作家が誕生した。07年3月卒の高瀬隼子(じゅんこ)で、『おいしいごはんが食べられますように』が第167回芥川賞の受賞作だ。生き方の異なる20代後半の男女3人を中心に職場の人間模様を描いた作品だ。
高瀬は幼少時から物語や小説が好きで、新居浜西高校では文芸部、進学した立命館大文学部でも文芸サークルに属していた。19年には第43回すばる文学賞を受賞、21年には『水たまりで息をする』で芥川賞候補に挙がっていた。
劇作家・演出家の鴻上尚史(こうがみ・しょうじ)が、高瀬より30年前に新居浜西高校を卒業している。1994年に上演した『スナフキンの手紙』でその翌年に岸田國士戯曲賞を受賞、16年には日本劇作家協会会長に就いた。舞台の脚本や演出、映画監督やテレビ・ラジオなどの演出や脚本、出演など縦横無尽に活躍している。
高校時代には生徒会長をする一方、演劇部に加え文芸部にも所属してミニコミ誌を出したりした。京都で浪人生活を送り、早稲田大法学部を卒業した。
23年3月、鴻上は初の自伝小説集『愛媛県新居浜市上原一丁目三番地』(講談社)を刊行した。「ブラック校則」と戦った高校時代のことなども、詳述されている。