頑張っているのに成果が出ない。どうすればいいのか、途方にくれる人も少なくないだろう。そんな人におすすめなのが、『1位思考──後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣』。「週刊ダイヤモンド」「トップポイント」など数々の書評で絶賛。創業9年目で売上300億円にしたアンカー・ジャパンCEOの猿渡歩氏、初の著書だ。猿渡氏は「適度にサボると生産性は上がる」という。コンサル→ファンド→27歳アンカー・ジャパン入社→33歳アンカーグループ最年少役員→34歳アンカー・ジャパンCEOになった著者が、参入したほぼ全製品カテゴリーでオンラインシェア1位になった秘密は、シンプルな6つの習慣にあった。本書の一部を抜粋しながら急成長の秘密を明らかにしていこう。
大きな絵を描けば常識は変わる
「エンシェントドラゴン」という折り紙作品がある。
折り紙作家の神谷哲史(かみやさとし)氏が1枚の大きな紙から創作した精緻で迫力ある作品で、『神谷哲史作品集』(おりがみはうす)の表紙を飾っている。
これは通常の折り紙の発想を超えている。
「鶴が折れたから次はエンシェントドラゴンを折ろう」というフォアキャスティング思考では絶対につくれない作品だ。
最初から「ドラゴンを折りたい」と発想し、どうしたらできるかというバックキャスティング思考だから実現できる。
「アンカー版エンシェントドラゴン」とは?
バッテリーや充電器のようなコモディティでブランドをつくるという発想がアンカー版エンシェントドラゴンともいえる。
競争が激しい「3LOW市場(Low Passion=消極的な購買姿勢、Low Recurring Rate=低いリピート率、Low Average Selling Price=低い平均販売価格)」で、しかも後発組がブランドをつくるなんて誰も思わなかっただろう。
大きな絵を描けば常識は変わる。
充電器というカテゴリーであっても、きめ細かく製品を開発・改善し、オンラインとオフラインの売り場を整備していけば勝てることが証明できた。
地道な取り組みだが、フォアキャスティングでコツコツやっていくのではなく、大きな絵を描き、その絵のジグソーパズルのピースを一つずつはめていった。
バックキャスティングのゴールは、ミッションに沿ったものになる。
なぜなら企業が存在する目的はミッションを達成することにあるからだ。
私のミッションは「Empowering Smarter Lives」実現のため、アンカーグループの企業価値最大化、それに付随する中長期の売上や利益の最大化だ。
「プロジェクターで1位になる」
「充電器でブランドをつくる」
など、ある程度大きい絵を示す。
バッテリーで1位になれない理由もなかった。
1位は見える世界が変わる。
1位は言い訳しなくていい。
メンバーもそんな目標があったほうがワクワクするだろう。
視座の高さをどう身につけるか
バックキャスティング思考には、幽体離脱して自分の姿や仕事を高いところから見つめるイメージがある。
これは大局観にもつながる。
高いところから眺めるので、フォアキャスティングでは目的への道が一つしか見えなかったのに、バックキャスティングでは別の道が見えることがある。
人気テレビゲーム『スーパーマリオブラザーズ』では空の上にショートカットの道があったりするが、ミッション達成にもこういった近道や別解は常に存在する。
大事なのは目的地に早く着くことだ。
バックキャスティングを行うには視座の高さが必要になる。
視座の高さは経験によって身につくが、常に目的を意識することでも高まっていく。
本書第1章で紹介した「全体最適の習慣」を意識しながら、企業をどう成長させるかを考えよう。
営業担当者なら日々「家電量販店の棚を確保すること」に邁進している人がいるかもしれない。
でも、それは企業が成長するための一つの手段にすぎない。
目的を考えると、気づいていなかった打ち手が見えてくることがある。
家電量販店だけではなく、ホームセンターにも置いてもらうことはできないかと考えてみる。
売上と利益を最大化するという目的に沿いながら、俯瞰的な視点を持つことで1位に近づいていくのだ。
(本稿は『1位思考』の一部を抜粋・編集したものです)