CASE2:「育ちのいいお坊ちゃん」の正体は
「子どもっぽいマザコン夫」だった

「まさかこんなに早く別れることになるとは思いませんでした」とため息をつくのは、先日2年に満たない結婚生活に終止符を打つことを決めたばかりの佐野愛さん(36歳・仮名・派遣社員)。友人の紹介で知り合った経営者の夫の第一印象は「育ちのいいお坊ちゃんが、そのまま大人になったような人。身に着けている物もきちんとしていて、物言いも『こうしたい』『あれが好き』などとストレート。バツイチとはいえ、親の代からの家業を継ぐ2代目社長。この人と結婚したら私も社長夫人として優雅な生活ができるのかな、と出会った瞬間すっかり舞い上がりました」。

 出会いの日から愛さんの猛烈なアプローチもあって、二人の交際はスタート。半年後には入籍して一緒に暮らし始めたのでした。

 結婚生活が始まってみると、「想像していた人と違った」と愛さん。

「とにかくワガママなんです。たとえばカレーを作ったときも『こういうスパイスの効いたのじゃなくて、昔ながらの普通のカレーがいいんだよ』と手を付けようとしないんです。それだけじゃなく、『おふくろだったら、すぐに作り直してくれるのに』と暗にやり直しを強要してくるんです」

 愛さんいわく、「カレーだけじゃなく、肉じゃがやハンバーグといった割と基本的なメニューにさえも『おふくろの味』を求めてくるのも腹立たしかった」。

 夫のワガママは料理のほかにも及んでいました。

「夫が着る洋服は、今まですべて彼の母親が選び、購入していたことが分かったんです。それを知ったときが驚きましたが、私もその習慣に従おうと指定のブランドショップで夫の洋服を買ってきました。それなのに、『こんなシャツがオレに似合うと思ったわけ?』『お前にはセンスってものがないのか?』などとダメ出しばかり。お義母さんが選んでいた物と、それほど差はないと思うのですが……」

「育ちのいいお坊ちゃん」と思っていた夫が、実は「子どもっぽいマザコン夫」だと気付いたと愛さん。

「何かにつけて私とお義母さんを比べることに嫌気が差して、あるとき『そんなにお義母さんがいいなら、実家に戻ってお義母さんと一生一緒に暮らせば?』とキレてしまったんです。すると夫は『ああ、今すぐそうしたいよ。お前と出会ったのが間違いだった』とまさかの反撃をしてきました。こうなると、売り言葉に買い言葉ですよね。お互いに我慢するより別れたほうがいい、という結論ですぐに合意しました」

 今は離婚したことよりも、結婚したことを後悔しているという愛さん。

「誰でも恋愛中は冷静になれないと思いますが、結婚という大きなライフイベントの決断はスピード勝負をするものではなかったな、と。もしもあのとき、時間をかけてじっくり相手と相手の家族のことを落ち着いて見極めていたら、こんなことにはならなかったのではないかと反省しています」