マイナンバーカードによって、健康情報、収入などを全て一元管理されることでどんな弊害があるのか。特集『マイナンバーカードの落とし穴』の#3では、あらゆる情報を一元管理する国で起きた怖い事例を解説。そしてトラブルが起きたとしても、「マイナポータル利用規約」免責事項を読むと「日本政府は何一つ責任を取るつもりがないことが分かる」という。(イトモス研究所所長 小倉健一)
多くの個人情報がひも付き、
国家が一元的に監視可能
マイナンバーカードによって健康情報、収入などを全て一元管理されると、便利かもしれない。しかし、国家が容易に監視できる社会になってしまって本当によいのだろうか。
今は、人の良さそうな岸田文雄首相がリーダーであり、むちゃくちゃなことはしないかもしれないが、次の政権、その次の政権と「国民を容易に管理できる仕組み」は残ってしまう。市役所や区役所の役人に、自分の住所、家庭環境、収入、病歴をのぞかれてしまう。差別を助長する危険はないのだろうか。
わたしたちが持っている「健康保険証」や「自動車免許証」などにも、それぞれマイナンバー同様に番号が与えられている。行政側からしてみれば、これまで別々に管理していた個人情報を一つにまとめるだけという感覚なのだろう。
マイナカードを推進する政治家や行政パーソンに取材をしても、「なぜ、効率的に運用することがダメいうことになるのか」「行政組織のスリム化にもつながる」「科学的な根拠、経済合理性を欠いた国民心理がパニックを起こしているのだから、丁寧に説明すれば分かってもらえる」と信じて疑っていないフシがある。
改めてマイナカードの問題点が何にあるのかといえば、あまりにも多くの個人情報がひも付けられている点と、それを国家が一元的に監視可能な仕組みである点だ。
個人情報の管理の仕方は
2つのパターンに分けられる
免許証と保険証で番号が異なり、それぞれで管理していた従来の日本を「日本A」として、マイナンバーが普及してあらゆる情報が一元管理された日本を「日本B」とするなら、日本Aはフランス、ドイツ、英国、オランダなどの欧州諸国と同じような仕組みである。
日本Bは、韓国、シンガポール、エストニア、そしてスウェーデン、デンマーク、フィンランドという北欧諸国の仕組みになる。米国も当てはまるが、番号付与そのものは拒否できる。
政府が常に善良であるとは思えず、ハッカーからの攻撃を受けることを想定すれば、欧州諸国に合わせたほう(日本A)が安全といえる。
日本Aから日本Bへと制度が変更されることで、被ることが予測される被害に絞って考えていこう。