「三笘の1ミリ」で話題!スポーツテックの最前線、キーパーソンが明かすPhoto:PIXTA

「三笘の1ミリ」で話題となったVAR(Video Assistant Referee)。この審判員補助技術の他にも、プロスポーツ界にさまざまな技術革新が起きている。2023年現在、25の競技にサービスを提供し、90カ国以上でスポーツテックを展開するホークアイ・イノベーションズの山本太郎氏(ソニー・スポーツエンタテインメント事業部統括部長兼ホークアイ・アジアパシフィック ヴァイスプレジデント)に、最新テクノロジーと、スポーツビジネスの展望について聞いた。

※本稿は山本佳司『スポーツビジネス最前線』(竹書房)より一部を抜粋・編集したものです。

ホークアイの基幹となる技術は3つ

山本佳司氏 ――改めてホークアイのソリューションについて詳しく教えていただけますでしょうか。

山本太郎氏 ホークアイ自体はいろいろなスポーツリーグと仕事をしていますが、競技数で言えば約25競技、90カ国以上の500以上のスタジアム、年間約2万にのぼる試合で何らかの形でホークアイのテクノロジーを使っていただいています。

 ホークアイのテクノロジーといえば“全部人をトラッキングするのではないか”とか“自動で判定するのではないか”と思われがちなのですが、基幹となる技術は3つあります。

「ゴールラインテクノロジー」とはボールがゴールに入ったかどうかを判定するシステム「ゴールラインテクノロジー」とはボールがゴールに入ったかどうかを判定するシステム 画像:『スポーツビジネス最前線』

 まず『ビデオリプレイ』。これはサッカーのVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)や、ラグビーのTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)のような、様々な位置から撮影した複数のカメラ映像から、確認したいプレーシーンの見やすい映像を選び、スロー再生や巻き戻し再生などを行って確認するものです。放送映像などを取得してサーバーに入れ、映像の同期をして様々な角度から同時に一つのプレーを見られるようにする技術です。

 続いて『トラッキング』です。ホークアイが日本で有名になったテニスのイン・アウト判定をはじめとして、最近ではプレーヤー(選手)のトラッキングもできるようになっています。そして、これらから取得できるデータをスポーツ解説などで使っていただけるようにする『データ提供』があります。これらの技術を組み合わせてソリューションを提供しています。

――具体的にはどのような活用事例になるのでしょうか。

 サッカーでは、ボールがゴールに入ったかどうかを判定して、CGで見せることもできるゴールラインテクノロジーを提供しています。

 テニスでは、コロナ禍でコート上の密を回避するために、線審はすべてホークアイが担い、審判は主審のみという大会も出て来ました。全豪オープンや全米オープンなどでもボールが“アウト”になった瞬間に自動音声で“アウト”というコールが出されます。

ラグビーでは選手の脳震盪の確認を支援するシステム「HIA」を提供ラグビーでは選手の脳震盪の確認を支援するシステム「HIA」を提供 画像:『スポーツビジネス最前線』

 また、ラグビーのW杯のTMOの場面におけるVTR確認のリクエストをする際に使用する仕組みは、サッカーのVARやメジャーリーグのチャレンジで使用されているものと同じものです。