スポーツの楽しみ方を広げるビジネス
ボールの集まった位置やボールの飛んだ場所など、いろいろなデータをファンが自分でフィルタリングして見ることができるようなツールも提供されていて、野球の楽しみ方の一つとして活用されているなと感じます。選手の骨格データとかフィールド内での位置情報などもお渡ししているので、MLBはこれを使い、良いプレーや注目すべきプレーが出た時に、CGでビジュアル化して紹介しています。その時に周りの選手はどう動いていたかという情報も全部含めて再現し、まるでそのシーンをドローンから見ているかのような映像で見せることもしています。
また、選手の動いた距離やプレーの秒数などのスタッツも見せることで、ファンの方は喜びますし、広告枠も表示されて、マネタイズするところまで設計されています。
日本ではまだまだこうしたデータの開示というのはされていないのですが、コアファンにとっては、回転数と軸の関係だったり、それが投球結果と紐づいていたりすると、さらに観戦の楽しさが広がり、議論が盛り上がったりしているようですし、日本でもデータ開示を進めていければと考えています。
たとえばMLBで提供しているような映像は非常に楽しいですし、いろいろな角度や視点で見られたりしますが、映像とエンターテイメントをやっているソニーとしては、少し映像が荒いのではないかなど、さらに良くできる部分が目についたりします。映像を滑らかに表現して、たとえばバイオメカニズム分野での使い方、選手の怪我の防止などにも活用できると思いますし、もう少しエンターテイメントに振っていくこともできると思います。現実にはカメラを置くことが難しい視点や角度から試合を見ていただくこともできます。再現映像は全部CGで作り込んでいますので、スタジアムも非常にリアルに描写されています。看板の広告なども見ている人や国・地域に合わせて動的に全部変えることもできるわけです。
スポーツを公平に、魅力的に、分かりやすく
――先ほどのデータの開示のお話がありましたけれども、データの透明性というところで、米国の事例のように“より楽しみ方を増やす”という観点もあると思いますが、データの透明性が高まることで、開示されているものは誰でも見る・知ることができるということで公平性が増し、これがひいては選手を守ることにも利用できるのではないかと思いました。
たとえばドーピングをしている選手がいて、明らかに通常とは異なる動きやパフォーマンスをしている、数値が圧倒的に違うとなった時にもそれがわかるかもしれません。そうしますと、選手としては自分自身を守るものとしてデータを使えることにもなるのではないかと思えます。
そうするとデータが誰にとっても良いものとして扱えるのではないかと思います。一方で、もちろん選手としては丸裸にされているような気がするかもしれませんが。
さらに『人々を感動で満たす』サービスの開発へ
――テクノロジーの現在地という意味でいきますと、今後の方向性や、今は出来ていないけれども将来的にこんなことが出来ると良いという期待値、または難しさを感じている部分はどんなことでしょうか。
『スポーツビジネス最前線』(竹書房)山本佳司 著
新しい審判判定補助ですとか、新しい視聴体験はどんどん進化させていきたいと考えています。一方で権利関係の部分は気を配っていく必要があると感じています。私たちが『こうしたい』と考えていても必ずしもその通りにできるものでもない部分がありますし、こうした技術やサービスの進化はもはや1社で行っていくような話ではなく、各競技のリーグやクラブと、より一緒になって新しいビジネスを創り出していく考え方が必要だと思っています。
スポーツはコンテンツとして本当に素晴らしい可能性を秘めていると思っています。その価値を高め、付加価値のあるものとして提供するための技術を突き詰めていきたいと思っています。それによって視聴者の感動体験が生まれたなら、ソニーグループとして考えているような『人々を感動で満たす』というサービスや製品開発に近づいてくると信じています。
タイトル、リード文内:「三苫」→「三笘」
(2023年9月7日17:00 ダイヤモンド編集部)







