コンサルティング業界で今、にわかに存在感が高まっているのが「スポーツ」ビジネスの領域だ。外資系大手、ビッグ4の他、国内系など幅広いコンサルファームが、スポーツ関連のプロジェクトに相次ぎ取り組んでいる。スポーツコンサルがすでに盛んな欧米に遅ればせながら、なぜここにきて日本でも広がりを見せ始めているのか。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、各ファームが取り組む豊富な実例とともに、スポーツ界に触手を伸ばす狙いをひもといた。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
欧米に遅れる形だが
日本で高まる存在感
成長著しい国内コンサルティング業界で今、いつになく熱気を帯びるのが「スポーツ」の領域だ。産業界では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を追い風に隆盛を極めるITコンサルなどに耳目が集まりがちだが、実は主要ファームの間で、スポーツ関連のプロジェクトが続々と進行中だ。
例えば、外資系総合ファームの「ビッグ4」(デロイト、PwC、EY、KPMG)の日本法人は4社とも、スポーツ系の支援プロジェクトに取り組んでいる。一例として、EYは今年4月にスポーツ領域のESG(環境・社会・ガバナンス)コンサルのサービスを開始。欧州ではサッカークラブを中心に、スポーツ領域でもESGを巡る積極的な情報開示が行われており、海外の最新動向も踏まえ、日本の競技団体などへの支援に乗り出したという。
巨大プロリーグを有する欧米では、以前からスポーツを巡る大手コンサルの取り組みが先行してきた。過去数年間でも、例えば戦略系ファームの米ボストン・コンサルティング・グループが、世界最大規模のプロサッカーリーグ・英プレミアリーグの改革案策定や、米メジャーリーグサッカー(MLS)の大規模調査を行ったと報じられた。他に、デロイト傘下のモニター・デロイトがインテル・ミラノ(イタリア)の戦略アドバイザーを担った例などもある。
半面、国内では産業規模の違いもあり、顧客から巨額のフィーが見込めるわけではないとあって、ひと昔前までコンサル各社がスポーツ界へ乗り出す姿勢は限られていた。ところが近年は、DXと並び産業界を賑わす新潮流が後押しする形で、日本でも徐々にスポーツ系の案件が増加。結果的に、スポーツ界の“担い手”の変化をも映し出す形で、独自の進化を遂げているのだ。
というのも、日本ではこれまで、スポーツクラブの経営を支える主体は事業会社が中心だった。Jリーグの各クラブの収益構造を見ても、主要国と比べてスポンサー収入の比率が高い異例の形態だ(『Jリーグ30周年「新戦略」を野々村チェアマンに直撃!DAZN値上げにどう対応?』参照)。
一方、資金の出し手という存在にとどまりやすいスポンサー企業と異なり、コンサル会社ならスポーツクラブ経営の実務的な次元でアイデアやソリューションを提供できるノウハウも持つ。コンサルは国内でも随一の急成長産業だけに、資金的な面を含め、手薄だったスポーツ分野まで手を伸ばす余力が出てきたとも言えそうだ。
だが、これはもちろんビジネスであり、慈善事業として行うものではない。フィーやブランディングにとどまらないメリットがあるからこそ、各社が力を注いでいるのだ。ではなぜ、コンサルが次々とスポーツ界に進出しているのか。次ページでは、その狙いや背景について、日系ファームを含む幾つもの実例とともにひもとく。