もちろん、彼女はまだ18歳。高知県の普通の高校にいて、大学に進学する同級生も多くなかった子には、早稲田に入学することがどれほど都会の子にとって重要な目標なのか、わからなかったかもしれません。18歳で演技や歌を学んだわけでもなく、天性の才能で人気を博し、絶頂を極めた子にそのことを理解させるのは、事務所としても難しかったと思います。

 が、ちょっと世間知のある子なら、バッシングされるリスクを察知し、「私のために落ちる人がいたら申し訳ない。だから自分のできる範囲で一生懸命勉強しています」などと、無難なことを言えるものです。しかし彼女には、そういう大人の智恵はありませんでした。

インタビュー中に飛び出した
驚くべき発言とは

 打ち合わせの席では、事務所と本人が希望するインタビュアーが指名されただけで、インタビューの中身はぶっつけ本番。不安を感じながら、インタビューが始まりました。

 しかしそれは、「これが早稲田を受ける子か。吉永小百合の再来か」と思わせるインタビューではなかったことも事実でした。インタビュアーが、文春がおじさん雑誌であることをわかっていなかったのも失敗の一つだったと思います。彼は雑誌のことより、彼女の気持ちに寄り添うことを大事にしたようで、いきなりこう切り出しました。

「早稲田大学、早稲田大学って騒がれているけれど、あなたはべつに、大学を出て普通に就職するつもりはないんでしょう?高校時代を受験勉強だけで過ごし、そのまま大企業に就職して灰色のスーツで毎日満員電車に揺られる人生を送るなんて、考えていないでしょう?だから、あなたを批判する人たちと同じ目標を持っているわけじゃないですよね」

 ここまでは、まあ、話の入り口だからよかったのですが、その後のインタビュアーのセリフが過激すぎました。「サラ公みたいな人生送るのなんて、真っ平ごめん。でも大学入る子って、そんな夢しかないんでしょ」と焚きつけ始めたのです。

 そして、この言葉に広末さんが反応しました。

「そうですね。決まった道を歩むなんて考えていないし、どうして良い大学に行くことを一番大事に考えるのか、わかりません」という趣旨のことを言ってしまったのです。

 私は正直、このインタビューをボツにしようかと考えました。彼女のためにならないし、ファンの期待に沿えるものでもないからです。