しかし、一方で同情もしました。まだ18歳です。いきなり芸能界デビューして、うまく周囲に対応できないのも仕方ありません。指名されたインタビュアーに煽られて本音が出たのかもしれないし、言わされた部分もなくはありません。だから、その場で注意したりせず「とりあえず明日事務所と相談しよう」と思いました。
聞けば、事務所の社長も商売っ気のない人で、本人らしくのびのびやらせたいと考える新しいタイプの経営者だということでした。翌日、私は社長にもう一度会いに行き、インタビューの中身を伝えました。「このままではとても掲載できない。彼女がメディアに叩かれるのは目に見えているし、だいいち女優広末涼子への期待はこれで終わってしまうかもしれません」と。虚像は虚像。彼女は「おじさんの、サラリーマンのアイドル」でもあるのだから、その期待を裏切らないインタビュー記事が必要なのです。
さすがに社長もそれは理解して、「文春さん、格好がつくように直してください」と頼まれました。徹夜で、ほとんど「創作」で書き直しをしました。しおらしいインタビュー記事ができあがりました。
ゲラを翌日、彼女に見せました。「しゃべったことと全然違うインタビュー記事になっているので怒るかな」と思っていましたが、原稿に直しは一箇所しか入りませんでした。
吉永小百合さんは4年間で早稲田を卒業し、次席の成績でしたが、広末さんは入学式にも参加せず、3カ月後にようやく登校。結局、ほとんど登校しないまま退学してしまいました。
結婚・不倫遍歴にも見える
「虚像」を拒否し続ける姿勢
その後も、女優としての彼女は山あり谷あり、でした。
映画で好演する一方、酔っぱらって東京から千葉の白浜までタクシーで無賃乗車、街頭で座り込む姿が雑誌に掲載されたこともあります。奇行が目立ち、「もう女優広末涼子は終わったか」と思うと、時折好演を見せて、業界における評判も相半ば。結婚と離婚、離婚せずとも不倫を繰り返したのも、また彼女が「虚像」になり切れない人だという印象を受けました。
名前が挙がった交際相手は数知れません。ただ、佐藤健さん以外にそれほど大物はいませんでした。結婚したのはモデルの岡沢高宏さん、そしてキャンドル・ジュンさん。正直、ファンにとっても、芸能ジャーナリズムにとっても「え?」という格差婚です。考えれば、これも彼女が「虚像」としての結婚を拒否していた証かもしれません。