そう、彼女は高知でのびのび育っていきたい女性であり、東京のエリート臭がするサラリーマン的な生き方が嫌いなのだろう――。そう思っていました。ですから、今回の料理人との不倫を聞いても、あまり驚きませんでした。IT長者と結婚するより、腕一本で生きてきた男性に惚れる方が広末さんらしいからです。

メディアが芸能人の私信を
公開することに問題はないのか

 不倫発覚後も騒動は続きました。

 料理人・鳥羽周作さんと広末さんによる交換日記の一部が、週刊文春に公開されたのです。この記事に疑問を感じる人もいるでしょう。「いくら芸能人でも、あそこまで雑誌が個人情報を暴露することが許されるのか」と。

 これについては、編集長経験者としてはっきり言えます。私信の公開は本来、完全な違法行為です。ましてや、恋文は極めて重大なプライバシーであり、差出人、受取人双方が了解しない限り、公開は不法行為にあたるのです。ちなみに、三島由紀夫の男性の恋人の恋文を掲載した書籍『剣と寒紅』を刊行した文藝春秋は、三島家からの抗議で、出版差し止め処分の判決を下されています。

 その経験のある文春編集部が、簡単に違法行為をするとは思えません。おそらく交換日記には、もっと生々しい描写がたくさんあったのだと思います。だから、「もし差し止め請求するなら、法廷では全文が公開されてしまいますよ」といった交換条件を提示するしか「公開」の方法はなかったと思います。もし私が交換日記を入手したとしたら、そんな交渉をしたでしょう。

 思えば私もイヤな職業をやっていたものですが、現編集部はちゃんと双方を説得して情報を出したのかもしれないし、それは未確認のため、あくまでも私の想像です。ただあの年齢で、SNSではなく、女子高生のような交換日記を書くという行為自体が、虚像になり切れず、「田舎の自由な少女のままでいたい」とあがく女性の姿を見てしまうような気がします。

 その後、広末さんが文春に電話をかけてきて、自分でインタビューに応じたという話を聞いたときも驚きました。世話になった事務所を批判しながら、感謝もする不可思議なインタビュー。そして「親権はすべて自分に」という条件であっさり、キャンドル・ジュンさんとの離婚を発表する決断力。「自分や相手の子どものことを考えないのか」という意見にも説得力はありますが、彼女は「昔の素の自分に戻りたい」と思い続けているように感じてなりません。

 高校生のような交換日記からは、「魔性の女性」でもおじさんの「理想の娘」でもない、田舎の少女の素顔が垣間見えます。そんな彼女に周囲のすべての人たちが振り回されている、私はそんな風に感じます。