広末涼子と二谷友里恵の
対照的な「その後」

 余談ですが、週刊誌編集長は、普段はインタビューのとき程度しか、女優やアイドルとの付き合いはありません。ただ、たまたまつぶさに2人のアイドルの破局を近くで見つめた経験があります。郷ひろみさんと二谷友里恵さんです。

 郷ひろみさんについては、説明する必要がないでしょう。二谷さんは、名優・二谷英明さんと女優・白川由美さんの娘として育ち、TBSドラマ『青が散る』で本格デビュー。学校は幼稚舎からずっと慶応で、大学卒業後すぐの1987年、郷さんと結婚。その3年後に刊行した『愛される理由』はベストセラーになりました。

 私が彼女と直接出会ったのは、1999年ころだったと思います。実は郷さんと私は同い年でしたが、そのとき、同い年と聞いて大笑いされたことを覚えています。10年くらい年上と思われたようです。まあ、今でもスタイル抜群の天下の郷ひろみですから、仕方ありません。

 しかし、彼女からの相談は、相当地に足が付いたものでした。離婚時、郷さんが書いた『ダディ』(当時は夫妻の共著とされていました)の中で誹謗中傷されたこと。子どもたちも父親に会いたくないと言っていること。離婚後も法廷で裁判を起こしたり、自分のことを「怖い妻」と書き続けたりと、このままでは娘たちが可哀相であること――。そんな話でした。

 彼女はすでに「ユリエブランド」を立ち上げた実業家であり、2人の娘の母でもあります。このまま「スター」であり続けたい郷さんと自分の価値観が、あまりにも違ってしまった。すでに一般人となり、『ダディ』で書かれたことを含め、娘たちからも反論したいと言われている、というのが彼女の言い分でした。

 結果、郷さんとの結婚生活とその終焉を綴った『楯』を週刊文春に連載してもらいました。郷さんとの離婚後、彼女は次の伴侶として、彼の遊び仲間であった家庭教師派遣会社トライの社長を選んでいました。私は超高級ワインが惜しげもなく出され、有名人ばかりが出席する結婚式に「タキシード着用で出席してほしい」と言われ、慌てて貸衣装屋に借りに行った思い出があります。

 その後、彼女は夫に代わって自らトライグループの社長となり、女優としての過去はほとんど捨て去っています。そう、虚像は捨てて、実像のまま生きる人生を選択したのです。

 東京のど真ん中でエリート一家に育ち、十分恵まれた生活を享受する生活を選択した二谷さん。一方、自分らしい人生に憧れ続ける広末さん。仕事上、偶然出会った2人の女優ですが、私は今回、人の「虚像」と「実像」について深く考えさせられました。

(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)