日本はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉参加の“最終列車”にぎりぎりで乗り込む。
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安倍晋三首相がオバマ米大統領との会談で、“聖域なき関税撤廃”が前提条件ではないことを確認したことで、3月上旬にも参加表明するとみられる。ただ、表明直後に米国との事前協議が終了したとしても、米議会に日本の参加を通知して承認を得るまで90日かかるため、正式参加は6月以降になる。
TPP参加国は今年12月の会合での妥結を目指している。それまでの会合は、3、5、9月。よって、日本が正式に交渉に参加できるのは最後の9月だけだ。
これまで日本の国内市場をいかに守るかに注目が集まってきたが、TPPはモノの貿易以外も含めた包括的なルール作りを進めるもの。その中に、日本にとってメリットがあるものは少なくない。例えば、参加国の政府調達の対外開放が進めば、日本は鉄道などインフラ輸出で有利になる。
9月の会合だけで、こうした得るものが多い項目のルール作りに日本の主張を盛り込めるのか。参加がずれ込んだ代償は小さくない。
また、7月の参議院選挙を前に、農業対策として“バラマキ財政”政策が取られる可能性は高い。日本がコメの輸入を認めたウルグアイ・ラウンド時には6兆円強が費やされたが、農業の生産性向上には結び付かなかった。今回も同様の対策が繰り返されれば、巨額の政府債務をさらに膨らませるだけである。
アベノミクスの第3の矢、成長戦略の重点項目であるTPP参加に向けた道筋が見えてきたことは一歩前進だが、先行きに不安は隠せない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)