恒大集団の米破産法適用申請で
一層迷走する中国経済
中国経済を取り巻く環境が劇的に変化している。直近の動向としては、1年半前にデフォルト(債務不履行)に陥り、2022年末時点で約49兆円の負債を抱える中国不動産大手・恒大集団(エバーグランデ)が8月17日、ニューヨークの裁判所に米連邦破産法第15条の適用を申請。不動産業界、および中国経済全体にさらなる不振と懸念をもたらしている。
中国共産党は自らが指導思想に据えるマルクス主義の「経済基礎が上部構造を規定する」という方針に基づいて統治を行ってきた。要するに、経済の動向が政治の安定を決定付けるという意味である。
特に、民主選挙によって成り立っているわけではない中国政治において、経済成長は党の正統性を保証する上で最も重要な実質的要素だといえる。言い換えれば、経済動向次第では、中国政治の安定にヒビが入る、最悪の場合、政権転覆すら起こり得るということである。だからこそ、「中国民主化研究とは中国共産党研究である」という主旨の下執筆する本連載にとって、中国経済というのは極めて核心的な分析対象となる。
以上のような前提認識に基づき、本稿では以下、昨今の中国経済を巡る8つのリスクを抽出し、分析・検証を加える。8つのポイントは相互に影響・作用し合う要素であるが、その順序と重要性の間に必然的相関性はなく、状況、分野、時機次第でその重要性や影響は変化し得ることを断っておく。