ドイツの旗とグラフ写真はイメージです Photo:PIXTA

欧州主要4カ国の中で唯一
ドイツ経済だけが勢いを欠く理由

 ドイツの2023年1~3月期実質GDP成長率は2四半期連続のマイナスとなり、欧州主要4カ国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)の中で唯一、テクニカルリセッション(統計上判断される景気後退)に陥った。7月28日に公表されたばかりの4~6月期実質GDPもゼロ成長となり、景気の停滞は続いている。

 高インフレやECB(欧州中央銀行)による利上げを受けた個人消費の減少、世界経済の減速による輸出の不振などが背景にある。特に、他国に比べてロシア産天然ガスへの依存度が高かったことから代替を余儀なくされ、エネルギー価格が高騰、政府の家計向け支援策(ガス価格の上限設定)も遅れたことで、個人消費の減少が目立った。

 ドイツのインフレ率(消費者物価の前年同期比)は2022年10月に11.6%でピークをつけた後、2023年6月にかけては在庫の積み上がりによってガス価格の上昇に歯止めがかかったため、エネルギーを中心に騰勢が弱まり始めた。

 しかしながら、人手不足などを背景とした賃金上昇圧力が根強いことなどから、インフレの沈静化を見通せる状況には程遠く、食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は6月時点で6.1%にとどまる。こうした状況を踏まえ、ECBは足元の経済・物価の動向や見通しなど各種データを見極めながら、インフレ抑制のため利上げを継続している。

 金融引き締めの影響が徐々に広がり内需が下押しされることなどから、ドイツ経済は当面停滞が続く見込みである。インフレが落ち着いて個人消費が復調し、景気が本格的に持ち直していくのは2024年入り以降になるとみられる。

 しかし、景気が底入れした後も(1)成長のエンジンとして期待できない対中輸出、(2)極右政党の台頭により不確実性の残る人手不足の解消、(3)野心的なグリーン政策に伴うコスト上昇懸念、といった構造的な課題が残り続けるため、これまでのようにユーロ圏経済をけん引役する役割は期待しづらいと考えられる。以下、3つの構造的課題について詳説したい。