米国による「先端半導体の対中輸出規制」に対抗し、中国がレアメタルの輸出規制を始めた。日本はガリウムの輸入を中国に依存してきたことから、今回の輸出規制によって不利益を被る可能性がある。今後もこうした事態が続くようなら、日本企業は大打撃を受けるだろう。だが筆者は、日本は中国との融和を進めるのではなく、中国との関係を絶ち切っても経済的に十分やっていける体制を築くべきだと考える。既存の同盟国に加えて、新たな国との関係を強化できれば、実現の可能性は十分にある。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
米中関係がさらに悪化すれば
日本が“割を食う”リスク大
中国はこの8月から、ガリウム・ゲルマニウム関連製品を輸出規制の対象に加えた。これらはいわゆるレアメタル(希少金属)であり、半導体・太陽光発電パネル・光ファイバーなどの製造に使用されている。
産業において極めて重要な素材だといえるが、他国は8月以降、これらを中国から調達する際に中国政府の承認が必要となる。
この措置は、米国が22年10月に打ち出した「先端半導体の対中輸出規制」に対抗したものだ。今後も米中の経済対立が激化し、米国による中国への規制・制裁がさらに強化されれば、中国からの対抗措置もエスカレートするだろう。
ここで懸念されるのが、“割を食う”形での日本経済への悪影響だ。日本はガリウムの輸入を中国に依存してきたことから、今回の輸出規制によって不利益を被る可能性がある。
今後もこうした事態が続くようなら、日本企業の経営には大打撃となる。それは避けたいのが企業の本音だろう。
日本の政治家・財界人には、中国と良好な経済関係を保とうとする「親中派」が少なくない。彼らが岸田文雄政権に「慎重な対応」を強く求めていけば、日本政府は今後、米国と一枚岩で中国への規制・制裁を進めていくのは難しいかもしれない。
では「親中派」のもくろみ通り、日本が中国と良好な経済関係を築けばよいのかというと、決してそうではない。それが逆にリスクになる可能性もある。これが対中関係の難しいところだ。日本における最先端の技術が中国などに流出し、国の安全が脅かされる「経済安全保障」の問題が付きまとうのだ。
中国では「国家情報法」「会社法」「中国共産党規約」などの法律や規約によって、国民が国家情報工作に協力することを義務としている。この義務の下、日本の企業や大学、研究機関などから最先端技術が盗まれ、中国における兵器開発に使われているという疑惑もある。