11×11~19×19をパパッと暗算できる「おみやげ算」。『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』は、小学生の計算力強化はもちろん、大人の脳トレとしても役立つと好評で、プレゼントにも最適です。読者からは「子どもが自分からすすんで取り組んでいる」「本当に暗算できるようになった」「自信がついた」などの絶賛の嵐が届いています。また、「王様のブランチ」「アッコにおまかせ!」「Nスタ」「イット!」「WBS」など、テレビ、新聞でもぞくぞく紹介! さらには、「2023年 上半期ベストセラー総合3位(日販調べ、トーハン調べ)に、学習参考書として「史上初」のランクイン! 本書の著者である、東大卒プロ算数講師の小杉拓也氏による、本連載のために新しく書き下ろした記事をご紹介します。

「19×19までの暗算」をする前に「たった1つのお願い」Photo: Adobe Stock

おみやげ算のおさらい

さっそくですが、おみやげ算の計算法について説明します。

(例)12×18=

①12×18の右の「18の一の位の8」をおみやげとして、左の12に渡します。すると、12×18が、(12+8)×(18-8)=20×10(=200)になります。

②その200に、「12の一の位の2」と「おみやげの8」をかけた16をたした216が答えです。
まとめると、12×18=(12+8)×(18-8)+2×8=200+16=216です。

この2ステップで、例えば、11×15、14×17、19×16などの「十の位が1の2ケタの数どうしのかけ算」は、おみやげ算を使ってすべて計算でき、慣れると暗算もできるようになります。

「19×19までの暗算」を使う前に、できればしてほしい願いとは?

19×19までの暗算」をマスターして、実際に計算をするときに、「可能ならこうしてほしい」ということがあります。

それはできれば、「この計算法で計算できる理由」を知ったうえで、使ってほしいということです。「おみやげ算で計算できる理由の証明(文字式を使った説明)」については、本連載の第2回『「16×18=288」が爆速で暗算できる驚きの方法』に掲載しています。

また、小学生向けの理由の説明は、『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』の巻末に、長方形の面積図を使った方法を載せているので、興味のある方はご参照ください。

「理由」を知らずに計算しているケースは少なくない

さまざまな計算法がありますが、「計算できる理由」を知らないまま計算しているケースは意外にあるものです。

「19×19までの暗算」とは離れますが、例えば「0.358×0.73=」の計算を例に考えてみましょう。この式を自力で解くとき、ふつう筆算で計算します。小数点がついていないものと考えて「358×73=」の筆算をすると、「26134」となります。これに小数点をつけて、答えを「0. 26134」と求めます。

では、ここで質問です。「26134」に小数点をつけるときに、「0.026134」でも「2.6134」でもなく、なぜ「0.26134」の位置に小数点をつけるのでしょう?この理由を、初めて習う方にもわかるように説明できるでしょうか。

その理由について、論理的に説明できる小学生は多くないのではないかと思います。つまり、「学校で習った計算の仕方を、理由を理解しないまま計算している」人が少なくないのではないかということです。「理由」を知ったうえで計算することで初めて、数や計算の仕組みを理解し、真の計算力がついている状態であるといえます。

では、「0.26134」の位置に小数点をつける理由について説明します。「0.358×0.73=」の筆算をするときに、小数点がついていないものと考えて「358×73=」の計算をしました。これは、「0.358を1000倍した358」と「0.73を100倍した73」をかけることを意味します。式に表すと次のようになります。

0.358×0.73
 ↓ 0.358を1000倍、0.73を100倍する
(0.358×1000)×(0.73×100)
=0.358×1000×0.73×100
=0.358×0.73×(1000×100)
=0.358×0.73×100000

つまり、小数点がついていないものと考えた「358×73」の計算結果の「26134」は、「0.358×0.73の答えを100000倍した数」ということがわかります。だから、「26134」を100000で割った、「0.26134」が0.358×0.73の答えだと求められるのです。

この計算の仕組みを知らずに、機械的に筆算するだけでは、本当の計算力がついているとはいえません。ただ現状は、計算の仕方だけを覚えて機械的に筆算している子が多いのではないでしょうか。

「19×19までの暗算法」も、計算する方々が真の計算力をつけるために、「計算できる理由」を知ったうえで使うのが理想であると考えます。もしくは、はじめは「計算の仕方」を習得して、後からでも「計算の仕組み」を知っていただくのもよいと思います。

本書を手に取っていただき「19×19までの暗算法」の仕方に興味をもってくれるだけでも当然ありがたいのですが、「可能ならこうしてくれたら、さらに皆様のためになるはずだ」と思い、今回の記事を書きました。他の様々な計算法についても、自力で計算するときに「計算の仕組みをちゃんと理解できているか」を考え直してみるのもいいかもしれません。