頑張っているのに成果が出ない。どうすればいいのか、途方にくれる人も少なくないだろう。そんな人におすすめなのが、『1位思考──後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣』。「週刊ダイヤモンド」「トップポイント」など数々の書評で絶賛。創業9年目で売上300億円にしたアンカー・ジャパンCEOの猿渡歩氏、初の著書だ。猿渡氏は「適度にサボると生産性は上がる」という。コンサル→ファンド→27歳アンカー・ジャパン入社→33歳アンカーグループ最年少役員→34歳アンカー・ジャパンCEOになった著者が、参入したほぼ全製品カテゴリーでオンラインシェア1位になった秘密は、シンプルな6つの習慣にあった。本書の一部を抜粋しながら急成長の秘密を明らかにしていこう。
プレイスの変遷
前回、「私たちがお客様へ提供する価値は4Pでいうと、プロダクトをしっかりつくること、プレイスを丁寧に増やすことの2つが中心だ」と述べ、「プロダクト」について説明した。
今回は「プレイス」について考えてみたい。
一般的に企業がeコマースをやる場合、まず公式サイトをオープンして集客を図り、その後、直営店やアマゾンへ販売チャネルを広げることが多い。
一方、私たちは大手ECプラットフォーム、アンカー・ジャパン公式サイト、家電量販店、直営店アンカーストアなど、積極的に販売チャネルの拡充を進めてきた。
当初はアマゾンを軸としたeコマース中心だった。
まず、「お客様がいる場所」を意識した。最初の頃、アマゾンや楽天での購入者はアンカー製品と知って購入しているわけではなかった。
購入後に初めてアンカーの品質のよさがわかった人たちも多かったと思う。
「いい製品」だと思って買ってもらうのも大事だが、購入後に「いい製品だ」と思ってもらうのも重要だ。
その後、徐々に販路を拡大してきた。
常に意識してきた2つのこと
常に意識してきたのは「広がり」と「深さ」。
創業当初から2017年まではアマゾン、楽天、ヤフーショッピングなどで徐々に「広がり」を、2018年以降は自社オンラインサイト、直営店アンカーストアなどで「深さ」をテーマにやってきた(図表8)。
2020年からは大手コンビニチェーンで急速充電器やケーブルなどを取り扱ってもらえるようになった。
一気に販売チャネルを増やすというより、多くのお客様に届けるために、どんな場所がいいのか考え続けてきた。
アマゾンで選びたい人もいるし、コンビニで気軽に買いたい人もいる。
私が大事にしているのは「お客様がプロダクトもプレイスも選ぶべき」ということ。
自社都合でチャネル戦略を立てるのではなく、お客様の便利さを優先する。
オンラインで電化製品を買える人は、比較的製品に対するリテラシーが高い。
そういう人は誰かに相談するのではなく、自分でリサーチや比較を行い、納得して買いたいというニーズがあるだろう。
一方、自分が求める充電器やイヤホンがわからないという人も多い。
というよりまだそういう人が大多数であると思う。
その場合、直接手に取ることができ、必要あれば店舗スタッフに聞くこともできる小売店や直営店の存在が重要になる。
公式サイトにあえてアマゾンリンク
そしてオンラインでの購入販路も、お客様によって一様ではない。
アンカー・ジャパンの公式サイトでは、購入ボタンの下にあえてアマゾンへのリンクをはっている。
公式サイトで購入してもらったほうが、メーカーにとっての利益率は高い。
アマゾンで購入してもらった場合は、プラットフォーム手数料が発生し、利益率が下がるからだ。
もちろん、公式サイトでの購入を推奨したい気持ちはあるが、お客様の中には
「改めて会員登録やクレジットカード情報を入力するのは面倒」
「同じ価格なら慣れているアマゾンで買いたい」
という人もいるだろう。
お客様の買いやすい環境を整えるのがメーカーの責務であり、価値提供を考え、販路を拡大しておくのが大切だと考えている。
(本稿は『1位思考』の一部を抜粋・編集したものです)