福田赳夫は1978年の総理大臣退任後、冷戦後の世界に関して、軍事・経済の諸問題と、地球人類問題が同時進行するという歴史上初めての危機に人類が直面していることを、強く意識していた。
「こうした問題への対処を誤ると、人類全体が存亡の危機に直面することは必然である」とし、来るべき21世紀への布石を速やかに打つ必要性を訴え続けていた。
その思いが1983年の第1回OBサミット(於ウィーン)開催となり実現する。(第1章)
また、福田とともにOBサミットを推進してきたヘルムート・シュミット(西ドイツ元首相)は福田逝去(1995年)10年後、次のように回顧している。
「福田氏は、その生涯を閉じられる直前、私たちにあることを請願されました。『啓蒙されたすべての人間には、共通する道義的真理と普遍的倫理というものがある。これを、異なる宗教や政治思想に固執する人々にも理解され、受け入れられやすいように表現してもらえないだろうか』ということでした。それは極めて重く、実に深淵な課題でした」(第6章)