インドが今夏、突如としてノートパソコンやタブレットなどの輸入に制限をかけた。中国をターゲットにした「貿易不均衡」の是正が目的だと考えられる。だが、インドでは過去に中国メーカーのスマートフォンの普及を阻もうとしたものの、シェア拡大に歯止めをかけられなかった過去がある。歴史は繰り返されるのか――。(中国アジアITライター 山谷剛史)
インドが突如として
パソコン輸入を制限
インドが今夏、突如としてノートパソコンやタブレットなどの輸入に制限をかけた。規制の正式な施行は11月からで、現在は「移行期間」に当たるという。
インド政府は今、自国を電子機器製造のハブにすることを目指す「Make in India」計画を掲げている。エレクトロニクス分野におけるインド国内での生産能力を強化し、国内外の企業によるインドでの生産を促進するものだ。
突然の輸入規制はこの計画に基づいており、中国をターゲットにした「貿易不均衡」の是正策だろうと報じられている。
なお米調査会社IDCによると、インドの2023年第1四半期(1~3月)におけるパソコン市場では、デスクトップ・ノートブック・ワークステーションなどの合計出荷台数が前年同期比30.1%減の299万台に減少した。需要の低迷や調達の遅延などが原因だという。
インドでシェア上位のメーカーは次の通りだが、出荷台数は前年同期比で大幅減となっている。
・1位:HP(約101万台/前年同期比30.2%減)
・2位:Lenovo(約47万台/同37.5%減)
・3位:Dell(約42万台/同49.8%減)
このうち中国メーカーはLenovoのみだが、欧米のブランドが自社製品に中国製パーツを使っている場合もある。このケースを含めると、インドのコンピューター製品輸入額53億3000万ドルのうち、75%以上が中国からだというデータもある。
こうしたマシンやパーツをインドで生産できるようになれば、パソコン市場の再拡大と「脱・中国」が期待できる。冒頭の規制は、そういうインド政府の目論見(もくろみ)によるものかもしれない。
一方、パソコンではなくスマートフォン(以下スマホ)については、インド国内での量産が進んでいる。海外メーカーの製品も含め、インドで展開されている主要なスマホは、おおむねインド国内の工場で組み立てられている。