国内生産が進むスマホも
実は中国メーカーが主流

 というのも、インドでは現在「生産連動型優遇策(PLI)」が施行されていて、インドで量産された製品の売上高に対して4~6%のインセンティブが支払われる。

 前述したパソコン類もPLIの対象になっているが、利用はスマホの方が進んでいるとみられる。スマホや携帯電話は世界的な競争で利幅が非常に小さくなっているので、このインセンティブがメーカーにとって魅力的なのだ。

 数値にもはっきり出ていて、インドにおける22年度の携帯電話本体の輸入は前年度比で33%減少し、モバイル製品を構成する部品については同27%増加した。各メーカーが部品を輸入してインド国内で組み立てる流れが加速しつつある。さらにインド国内の消費にとどまらず、UAE(アラブ首長国連邦)や欧州に輸出している。

 とはいえ、インド国内における市場シェア(出荷台数ベース)を見てみると、中国メーカーの比率が極めて高い。あくまで中国メーカーがインド国内で製品を組み立てているだけで、インドの国産メーカーが強くなったわけではないのだ。

 調査会社Counterpoint Researchによると、23年第1四半期におけるシェア(出荷量ベース)の首位は韓国のSamsung(20%)だったが、2位はvivo(17%)、3位はXiaomi(16%)、4位はOPPO(12%)、5位はRealme(9%)と中国メーカーが続く。

 この状況を踏まえ、インド側はさまざまなアクションを起こしてきた。

 例えば20年には中印の国境紛争に関連して、インド国内の一部で中国製品の不買運動が起きた。22年にはXiaomiがインド子会社に不正送金をした疑いがあるとして、インド当局が同社の銀行口座内の資産1000億円弱(555億ルピー)を差し押さえた。またインド当局は現時点で、200を超える中国製アプリを使用禁止にしている。

 こうした措置の影響もあってか、中国で電子製品の工場が集中している東莞(とうかん)市では輸出が大きく減り、広東省で最もGDP成長率が低い自治体となっている。

 ただ繰り返しになるが、それでも中国メーカーのスマホはインドで高いシェアを勝ち取っており、インドの国産メーカーは弱いままだ。その理由は何か。

 中国スマホがインドを含む海外で強い第一の理由としては、「ニセモノを生み出すものづくり力」の高さを挙げたい。中国のOPPOはスマホ事業に参入する前に、米Appleの「iPod」にそっくりで安価な音楽プレーヤーを出していた。

 もっとさかのぼれば、OPPOやvivoを傘下に持つ企業「BBK」の創設者・段永平氏は、中国で広く普及した「ファミリーコンピュータのニセモノ」を作り続けるメーカー「小霸王」に属していた。

 Xiaomiも当初はAppleに似たWebサイトを用意し、性能はそこそこながら非常に安いスマホの予約販売を行っていた。数が不十分なのですぐに品切れを起こし、消費者の購買意欲や関心をあおる「飢餓商法」によってマニアの注目を集めた。

 そして中国メーカーは、大手の他にも有象無象の企業が新型iPhoneリリースのたびにそっくりな製品を出してきた。それどころか「XiaomiやOPPO製品のニセモノ」まで登場している。