「便利蜂」という中国の新興コンビニをご存じだろうか。顧客対応と従業員管理の両面でITをフル活用しているのが特徴だ。顧客対応では、商品のQRコードを読み込むだけで決済が完了するなど先進的な仕組みを採用している。だが従業員管理においては、ミスをした店員に対してAIが「減給処分」を下すなど非情な対応を行っているようだ。これに反発した関係者がSNSで内情を暴露するようになり、店舗数を順調に拡大していたはずの便利蜂に逆風が吹き始めている。その模様を詳しく解説する。(中国アジアITライター 山谷剛史)
登場から4年あまりで
2800店を「爆速展開」
中国には「便利蜂」という新興のコンビニがある。2017年に誕生し、AI・IoT・ビッグデータといったテクノロジーを活用することで運営の効率化を目指す新業態のコンビニだ。
当初は北京で開業した便利蜂は、多数の無人レジが置かれたことが話題となり、その後は中国各地に展開していった。専用アプリで商品のQRコードを読み込むだけで決済が完了するなど、既存のコンビニにはない仕組みも注目された。
中国ではかつて、未来的なガラス張りの“無人コンビニ”が世界に先駆けて登場するも、うまくいかずに消えていった過去がある。だが、便利蜂はそれとは対照的に、店舗数が19年には1000店、20年には2000店を超え、21年末には2800店(中国連鎖経営協会発表)と急拡大している。
新型コロナウイルス感染拡大を物ともしない出店ペースで、「23年には1万店まで増やす」という目標も打ち出している。
ただし便利蜂に限らず、中国企業は「最初は華々しいプレスリリースを流すが、後からぼろが出る」傾向が強い。企業が打ち出すメリットや青写真だけを見るとすごそうだが、調子が悪くなったとたんに、内部情報がぼろぼろと漏れ出して、うわさ話としてネットで拡散されていく。
便利蜂も最初は調子が良かったが、どうも最近は経営状況が良くないのか、ハイテクコンビニの「リアルな内情」が次々とネット上に漏れ出している。
その情報によると、便利蜂はテクノロジーを活用して、商品だけでなく労働者も徹底管理しているようだ。
次ページからは、中国で順調に拡大していたはずの「未来型コンビニ」の落とし穴について解説する。労務管理のデジタル化を進めた結果、あらゆる行動をAIに管理・評価されるようになった店員の苦悩とは…?