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スマートフォンの理想と現実

サムスンら大手ベンダーが新端末の発表を見送り
新興勢力の中国勢には未だ“ビジョン”見えず

――モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2013レポート【前編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第45回】 2013年3月5日
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 もちろんこれはいつものことだから仕方ない。彼らはCESにもいないし、こういった展示会に出展者の一人として直接顔を出すことは、かなり少ない。

 ではもう一方のサムスン電子はどうかというと、大規模な展示を展開してはいたものの、MWCでの新端末の発表を今回見送っている。間際には概ね分かっていたことではあるのだが、とはいえCESでの発表がなかった際に「今年はバルセロナで発表か」と目されていただけに、ネガテイブインパクトである。

 こうした状況は彼らに限らない。htcも新製品発表をMWCそのものではなく直前にズラしているし、ソニーは今年はCESですでに発表済みだ。

 いわば「MWC外し」ともいえる動きが、今年は露骨に顕在化した格好となった。その理由の一つは、バッティングの回避。あまりに同時期に発表が重なりすぎるので、現地ではプレスの奪い合いになっていた。そしてその争奪の結果が、報道される量に露骨に反映する。この状況を各社とも嫌ったというのが、正直なところだろう。

 また、北半球の先進国を中心に、実際に商戦が盛り上がるのは、下半期である。MWCではそれまでに若干間があいてしまうという事情もあるだろう。特にアップルがMWCに参加せず、この先に独自に新製品を発表する以上、ある意味でアップルの「あとだしジャンケン」を許してしまう状況でもあった。

 この「あとだしジャンケン」は、マーケティングの観点はもちろん、チップをはじめとする部品調達にも重大な影響を与えかねない。現在の市場を牽引するアップルにこうしたキャッチアップを許してしまうということは、追いかける側が自爆しているようなものである。

 今年のMWCは、そうした各社の思惑が如実に反映された結果となった。とはいえ各社とも、カルテルなど結べるはずもなく、こうした状況は今後も続くだろう。逆に言えば、アップル以外のスマートフォンメーカーも、それなりに成熟を重ね、独自の発表スタイルを模索する時期に入った、ということでもある。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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