有名企業が個人ワーカーから技術やアイディアを募り、オンライン上でチームを結成、ひとつのプロジェクトを進めていく。そんな「クラウドソーシング」のスタイルが、海外では広く浸透しており、時間や場所にとらわれない「新しい働き方」として根付きつつある。
世界最大のクラウドソーシングは、中国の「猪八戒」。現在760万人の登録者を擁している。英語圏では、米国の「oDesk」「Elance」、オーストラリアの「Freelancer.com」などがグローバル展開を行っており、今後、アジアへの進出も精力的に図ると予想されている。
日本でも、この1月には、業界大手の「クラウドワークス」が「Yahoo!クラウドソーシング」と連携することを発表。事業拡大を明らかにした。一方、国内最古参として、日本でこの分野を牽引してきたのが、2008年に誕生した「ランサーズ」だ。登録会員11万人。流通額でも国内最大。ランサーズでは、すでに年間800万円を売り上げる個人ワーカーも登場している。物価の安い地方に住み、クラウドソーシングを活用して、会社員と同レベルか、それ以上の収入を得ているツワモノは少なくないという。
「ランサーズ内でクライアントからの定期的な直接依頼が増えることで、安定的かつ継続的な収入が確保できています。支持してくれる継続クライアント数の増加に伴い、仕事単価を上げていける状況です」(ランサーズ株式会社山口豪志氏)
“仕事のマッチングだけ”を行ってきた従来型のマーケットプレイスとは異なり、現在のクラウドソーシングは、案件選びから契約、作業管理、納品、決済に至るまですべてウェブ上で行えるのが特長だ。
プロダクションや代理店を通さないため、働き手が受け取る報酬額も従来より多い。高収入を得る秘訣は、初めての作業時にクライアントの期待以上の成果を出し、指名発注を受けるようになること。同時にペースを着実に上げていくことで、より仕事が集まる状態を作っていけるようになる、と山口氏は言う。
クライアントの増加に伴い、案件の多様化、複雑化が進行していることから、ランサーズは2月にプラットフォームの細分化に踏み切った。従来型の「ランサーズタスク」に加え、デザイン案件を依頼したい発注者が方向性にマッチしたクリエイターを探せるように、検索機能を付加した「ランサーズポートフォリオ」を新設。
また、一定の品質を保ち、優秀と認定されたワーカーが、大規模案件や複雑な案件を請け負うプラットフォーム「ランサーズエキスパート」も設けた。こちらは、高度なプロジェクトをチーム体制で進めていく欧米型ワークスタイルの試みだ。
今後、日本でも一層の広がりが予想されるクラウドソーシング。ランサーズでは、2016年に同サービスを通して“年収500万円の個人ワーカーを1万人生み出す”という目標を掲げている。そこに焦点を絞ったサービスやシステムの拡充に力を入れていく方針だ。現在は、ウェブ関係やデザイナー、プログラマーなど比較的フリーランス指向の高い職種が多い状態だが、今後は広く一般の職種へも裾野を広げていく予定だ。
将来、独立を考えているビジネスパーソンは、こういうサービスを活用し、まず腕試しをしてみるのも良いトレーニングになるだろう。継続して受注できれば、独立への足がかりになるかもしれない。
「現在は、サービスを未活用の企業も、今後は取り入れる機会が増加していくでしょう。近い将来、国内企業ではクラウドソーシングの活用が当たり前になると考えています。これからは、プランナーや企画・営業的な分野についても、順次拡大していく方針です」(同氏)
米国では、すでに4人に1人がフリーランスの時代。この流れは不可逆だ。フルタイム勤務からオンデマンド勤務への過渡期と言える現在、クラウドソーシングの動向から目を離してはもったいない。
(吉田由紀子/5時から作家塾(R))