子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では、船津氏のこれまでの著書から抜粋して、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。
もともとコミュニケーションが得意な子どもはいない
賢い家庭で行われている習慣の一つが、密なコミュニケーションです。
社会に出て活躍している多くの人は、高いコミュニケーション能力を持っています。
専門分野で高い能力を持っているだけではなく、人とうまく交流する力を持つことで、どんな場所でも自分のやりたいことを次々と実現していけるのです。
コミュニケーション能力とは具体的に、聞く力、話す力、独創性、相手の表情やしぐさから場の空気を察する力(非言語コミュニケーション力)など様々ありますが、家庭教育において特に大切にしてもらいたいのが「楽観性」です。
2010年に米国のニューメキシコ大学で400人の学生を対象にユーモアと学力の関係を調査する実験が行われました。
空白の3コママンガにセリフを書き込むこの実験で、ユーモアを作り出す能力が高い学生ほど高い学力(言語運用能力、推理力など)を持っていることがわかりました。
ユーモアはコミュニケーションを円滑にするだけではなく、学力にも密接に関係しているのです。
実際、優秀な子たちはみな気さくで、どんな人とも瞬時に仲よくなっていく適応性を持っています。
そのような子たちも、当然、最初からコミュニケーションの達人であったわけではありません。
やはり、親との関わり方なのです。コミュニケーション力も、その基盤は家族との交流の中で育っていきます。特に重要なのが「家族で食事をする時間」です。
子どもと一緒にいる時はスマートフォンやパソコンに向かっている手を休めて子どもと話をすることが、コミュニケーション能力を養い、子どもとの信頼感を高めてくれます。
この時行うのは、「楽しい雑談」です。子どもにその日の出来事を聞き、親がおもしろおかしく話し、ただその場を楽しむことがコミュニケーション力の育成につながります。
親が自分の些細な失敗をおもしろおかしく話してあげることもよいでしょう。
悲しいこと、イライラすること、怒ってしまう出来事も、見方を少し変えると「ユーモア」になるということを教えてあげると、子どもは悪いことや嫌なことが起きた時にも悲観的にならず、笑い飛ばせる「楽観性」を身につけていきます。
また、親の何気ない問いかけで、子どもの考える力を伸ばすことも可能です。地頭力の強い子どもは、多くの場合、家庭での過ごし方によって当意即妙の発想力、言語力を獲得していきます。
一方で、食事中の「宿題やった?」「誰と遊んだ?」「テストは大丈夫?」といった小言や尋問は、繰り返すことで子どもが親の話に聞く耳を持たなくなります。
たとえば子どもの食べ物の好き嫌いも、楽しい会話をしながら食事をする家庭ではほとんど聞かれませんが、家庭でのコミュニケーションが楽しくないと感じれば、食事に対しての興味も薄れてしまうのです。
子どもが「何でも話せる」環境作りが重要である
家族の時間で何においても重要なのは、家族で楽しく過ごすということです。
会話が楽しければ、子どもはリクエストされずとも自ら話題を提供するようになります。
子どもが勉強や友達関係や異性関係などの悩みを何でも親に相談できれば、ストレスを溜め込むことが少なくなります。
また、勉強面でもわからないことを放っておくことがなくなり、学習の消化不良に陥らずに済むのです。
これは、習い事の継続、進路の相談などでも非常に役立ってきます。
平日は家族全員が揃うことが難しいという場合は、週末だけでも一緒に食事をとることをルールにするのもよいでしょう。
食事中はテレビを消して、その週にあった出来事を話し合います。それだけで家族関係が目に見えて良好になります。
仕事で忙しくても、せめて週末だけは子どもと一緒に過ごし、スポーツをして身体を動かしたり、釣りやハイキングに出かけたり、家でゲームをするでも構いません。
「子どもと一緒の活動」をすることが重要です。そうすることで心理的な距離も近くなり、子どもは親に何でも話せるようになります。
なお、より具体的な家庭でのコミュニケーションのとり方については、第4章でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
・子どものコミュニケーション力や地頭を鍛える絶好の場になる
・テレビは観ない、パソコンやスマホはいじらないことが原則
・食事中は楽しい雑談に徹し、小言は厳禁
・失敗談も積極的にユーモアに変えて話す
・家族の信頼感が高まることで、子どもが安心できる場になる
(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)