「日本は強盗とか流行しますよ」ヤミ金業者の言った通りに…

 実はこの時代、筆者は月刊誌に寄稿したり、講演したりして、消費者金融への過度な規制を控えるべきだと警鐘を鳴らしていた。

 当時、筆者は違法ビジネスやヤミ金によく取材をしていた。彼らは口をそろえて、グレーゾーン金利撤廃や総量規制を「ビジネスチャンス」だと語っていた。

 年配の方ならわかるが、昔は「街金」と呼ばれる「無担保小口融資」の業者がいた。免許証などの本人確認だけで金を貸す。もちろん、貸す側もリスクがあるので出資法上限金利という高金利だ。ただ、こういう「無担保小口融資」をしているのは小さな業者なので、最高裁判決以降、過払い金返還請求でほとんど絶滅してしまった。

 では、ここを利用をしていた人はどこへいくか。プロミスやアコムなどの消費者金融の大手は銀行傘下に入り、審査も厳しく総量規制で年収の3分の1しか借りられない。となると、「闇」に流れるしかないというわけだ。

 2008年ごろに話を聞いたあるヤミ金業者は、「総量規制のおかげで大忙し」だとホクホク顔で語っていた。そして利息を払えなくなった者を、オレオレ詐欺の出し子などにあっせんしている、と笑っていた。

「これからの日本は強盗とか流行しますよ。私はやらせないけれど、やばい連中は金さえ回収できればいいんだから何でもやらせますよ。多重債務者の連中は、どこも金を貸してもらえないんだから、逆らえないでしょ」

 確かに、彼らの言う通りになっている。昨今、大学生や無職の人がSNSで「闇バイト」に応募をして、詐欺や強盗のメンバーとして参加させられているが、なぜ「闇バイト」に応募をするのかというと、「低信用」でどこも金を貸してくれないからだ。学費や家賃で生活も困窮する中で、仕送りが何かの事情で途絶えたら、「闇バイト」に応募するしかない、というのが現実だ。

 そんな話を、筆者は金融庁のヒアリングに呼ばれて報告もしたが、「難しい問題ですねえ」なんて言われて終わった。当時の金融庁幹部を、ヤミ金業者に実際ひき会わせて話を聞いてもらったりしたが、政策は特に変わらなかった。むしろ、そういうことをやればやるほど、「消費者金融からいくらもらっているんだ」とか「サラ金御用達ライター」とか叩かれるので、面倒臭くなってあきらめた。

 今回も似た匂いがプンプンしている。