同世代との新たな交流も施設のメリット

 最後に、施設。施設のメリットには、24時間誰かがいるという安心感、そして他の入居者と交流できることがあります。自宅での療養生活を続けている場合、家族以外とのコミュニケーションがどうしても希薄になってくることがあります。年を重ねるごとに、外出したり人に会うことが億劫になってくることがありますが、家族だけの生活が続くと、時には行き詰まってくる場面もあります。無理に自宅での生活を続けるより、施設での生活のほうが介護する側・される側にとって良い場合も十分にあるのです。

 施設という環境で、似たような世代が集うことで、家族以外とのコミュニケーションが生まれやすい側面もあります。そうしていろいろな人と接することが、心身ともに良い作用をもたらすこともあります。時折、「施設に入れるのを悪いこと」だと思っている家族にお会いすることがありますが、施設ならではの良さもたくさんあります。

 実は私自身も、故郷の沖縄で暮らしていた母を近くに呼び寄せ、施設で看取りました。在宅医として24時間365日体制で働く私は、母の様子を見に頻繁に沖縄に帰ることがどうしても難しく、母の状況を考えると近くの施設に入ってもらうのがお互いにとって良い、という話になったのです。

 日本では、親を施設に入れることに対して、どこかマイナスなイメージがあるように思いますが、実際に経験してみると、施設ならではの良さもたくさん感じました。施設で母の日に100本のバラを持たせてもらって写真撮影した時の、母の嬉しそうな顔を思い出します。施設ではこうした季節行事や各種レクリエーションが充実しているぶん、自宅の環境にはない賑やかさがあり、母も楽しそうに過ごしていました。

 一口に施設といっても、さまざまな種類や特徴があります。まずはどんな施設があるのか、その選択肢を知り、どのような施設で過ごしたいか考えておきましょう。どんな施設があるのかを知るために、一度見学に行ってみるのも良いと思います。いろいろな施設を見比べるうちに、自分に合った施設がどのようなものか、イメージが明確になってくるでしょう。