約8割の人が病院で亡くなる時代ですが、「住み慣れた場所で最期を迎えたい」と願う人も多い現在です。厚生労働省の「平成二九年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査」によれば、「治る見込みがない病気になった場合、どこで最期を迎えたいか」との問いに対して、「自宅」との回答が54.6%で最も多く、「病院などの医療施設」は27.7%でした。

 一方、末期がん、重度の心臓病、認知症のそれぞれの病気の場合に「医療・療養を受けたい場所」を聞いた問いでは、下の図1のように病気によってそれぞれ選択する場所の割合が異なります。また、それぞれの病気で「医療・療養を受けたい場所」として自宅を選択した人のうち、「最期を迎えたい場所」に自宅を選択した人は、いずれも6~7割にとどまる結果でした(図2)。

図1「医療・療養を受けたい場所」、図2「最期を迎えたい場所」(『在宅医が伝えたい「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』P.66より転載)図1「医療・療養を受けたい場所」、図2「最期を迎えたい場所」(『在宅医が伝えたい「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』P.66より転載) 拡大画像表示

 このように、過ごしたい場所や最期を迎えたい場所は、その時々に直面している状況に応じて変わって当然で、その都度変えて良いのです。例えば、「今は自宅で過ごしたいけど、最期は病院がいい」でも良ければ、その逆も然り。一度決めたら、ずっとその場所にいなければならないのではなく、あくまでその時々に望んだ場所で過ごせるかどうかが大事なのです。

メリットはそれぞれ違う

 自分が過ごしたいように過ごすことができる――。在宅療養の大きなメリットが、この自由に過ごせることにあると思います。

 病院は治療が主体となる場所であるがゆえに、入院生活には何かと制約がつきものです。ですから「病気と付き合っていく」という場合や、「治療によって治る見込みがない」という終末期になった場合には、たとえ一人暮らしであっても、在宅療養を選択肢に入れても良いと感じます。

日本人にとっての望ましい死(『在宅医が伝えたい「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』P.67より転載)日本人にとっての望ましい死(『在宅医が伝えたい「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』P.67より転載) 拡大画像表示

 上の表は、日本人にとって望ましい死とは何かを明らかにする研究結果で、望ましい死を考えた時に80%以上の人が重要であると答えたものです。「望んだ場所で過ごすこと」「落ち着いた環境で過ごすこと」の項目から、望ましい死には過ごす場所や環境が大切であることがわかります。

 どんな場所や環境を望むかは、その人の考えや価値観によっても変わってきます。大切なのは、自分が希望する場所で、希望する過ごし方ができるかどうかです。

 療養生活を送り、最期を過ごす場所は、自宅、病院、施設のいずれかになります。希望する場所を考える上で参考になるのが、それぞれの「過ごす場所としてのメリット」。ここでは、それぞれの良さを比較しながらお話ししたいと思います。