こんなに頑張ってるのに、正当に評価されてない! 社員がそんな不満を抱えていると知ったとき、どう対処すればいいのだろうか。
そんな管理職ならではの悩みを持つ人にぜひ読んでもらいたいのが、『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。優秀なビジネスパーソンに共通する思考アルゴリズムが、見事に解説されている。
著者は、北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長・木下勝寿氏。ベストセラーとなっている本書は、多くの経営者やビジネスパーソンから評判の一冊だ。
そこで、本書からより深い学びを得ようと、職場の「あるある」なお悩みを、木下氏に相談させてもらうことにした。「仕事が遅くて困っている」から「部下が動いてくれない」という悩みまで、その場しのぎの対策だけでなく、根本的な問題解決策を教えてもらおう。
連載5回目は、「頑張りが成果につながらない社員の対処法」だ。(構成・川代紗生)

疲れるPhoto: Adobe Stock

社員を正当に評価するのは難しい

──「自分のほうが頑張っているのに、〇〇さんのほうが評価されている」「手柄を横取りされた」など、「自分の仕事が正当に評価されていない」と不満を抱いている社員が多い……という場合、管理職はどんな対処をすればいいでしょうか?

木下勝寿(以下、木下):管理職としては、「誰が成果を出したのか」を判断するのはなかなか難しいですね。

 本人は「自分がやった」と思っていても、実は裏で上司・先輩がいろいろ根回ししたり、フォローしたりしてくれたりすることもよくあります。

 逆に、本当に手柄を横取りする人がいる場合もあります。

 たとえば、先輩が営業でアポを取ったのに、急用ができて行けなくなってしまい、後輩に行ってもらったら、受注が決まった場合はどうでしょう。

 後輩社員は「僕が受注を決めた」と思っているでしょうが、実は先輩社員が丁寧にやりとりしていて、アポが取れた時点でほとんど受注は決まっていたというケースもあります。

──それまで長くコミュニケーションを取ってきたクライアントで、後輩が最後のクロージングを担当しただけだった、ということですね。

木下:社会人経験が長い人なら、「アポまでが大変だったろうから、これは先輩のおかげ」とわかるのですが、キャリアが浅い社員は「自分の手柄だ」と思いたいわけです。

──「自分が全部やった」というのが勘違いで、他の人に比べると貢献度が低かった、というケースもあるわけですね。

「月1回のMVP制度」セルフレポートを提出

──「頑張っているのに正当に評価してもらえない」という認識のズレに対し、管理職はどんな対策をすればいいでしょうか?

木下:2つの方法があると思います。

 1つは、「MVP制度」を活用すること。

 当社でも月1回MVPを決めるのですが、それにあたって、月末に自らの仕事を毎月レポートで報告してもらうようにしています。

 そうすると、誰が何をやっているかを把握しやすくなるのです。

──チームの仕事、他者の仕事ではなく、自分の仕事についてレポートを出すんですね。

木下:そこがポイントなんです。

 たとえば、よくあるのが「私がこれをやって、こういう成果を出しました」と、先輩と後輩が同じ案件に対してどちらもまったく同じ内容を書いてくるケース。

 レポートをよく読んでみると、「当事者にしかわからない情報が細かく書いてあるから、実際には後輩がほとんどやっていたんだろうな」ということがわかってきます。

 逆に、先輩がやり方を全部考え、作業だけ後輩にやらせたものの、後輩は全部自分の手柄だと思い込んでいるケースもあります。

 もちろん、誇張して書く人もいるので、判断が難しい場合は、まわりの社員にヒアリングし、事実確認した上でMVPを決めることもあります。

 こうすると、目立たないところで貢献してくれた社員に気づくこともあるので、おすすめです。

「どうして評価してもらえないの?」
認識のズレをなくす方法

木下:もう1つ重要なのは、半年に1回の査定前のタイミングです。

 面談前に半期の自分のやったことをレポートにして提出してもらうのですが、「特に評価してほしいところがあれば、書いてください」という項目があります。

「こんなに頑張っているのに、どうして評価してもらえないの?」という不満の中には、会社にとってまったく重要ではないところにエネルギーを割いていたからというケースもあります。そことのギャップが確認できるのです。

 評価とは「どれだけ頑張ったか」ではなく「どれだけ貢献したか」で決まるもの。

「あなたは確かに頑張ったけれど、会社が重視していないところにエネルギーを割いていたから、自分がやりたいことではなく、会社に役立つことをやってくださいね」と面談でフィードバックするようにしています。

──社員と会社との認識のズレをお互い確認できるのでいいですね。

木下:『時間最短化、成果最大化の法則』の「お客様目線の法則」でも触れましたが、仕事で大切なのは、「どれだけ一生懸命やったか」ではなく、「どれだけお客様の役に立ったか」。

 私は社員から「細かすぎる」「うるさい」と言われても、「お客様に満足していただけることがなにより」だと思っていますし、社員には「仕事とは一生懸命やることではなく、お客様の役に立つこと」であると教える必要があると思っています。

 部下への対応に悩んでいる人は、今回お伝えしたような、

1.月1回のMVPを決める際、「どんな仕事をしたかレポートを出してもらう
2.半年に1回の査定時に「評価してほしいところ」を書いてもらう

 このような制度を、まずは自分の部署・チームだけでも取り入れてみるといいかもしれません。