短時間で成果を出している人がいる一方、頑張っているのに成果が出ない人もいる。この違いは何だろう? 経営の最前線で20年以上、成果上げられる人と上げられない人の差を徹底研究してきた人物がいる。東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」第1位、フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」4度受賞の木下勝寿社長だ。「やる気に頼らず楽しく続けられる」と話題となっているのがベストセラー『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』。【がっちりマンデー!!】(TBSテレビ系)のSNSで、「ニトリ」似鳥会長と「食べチョク」秋元代表から「2022年に読んだオススメ本3選」に選抜され話題となっている。本稿では、本書より一部を抜粋、「最短時間で最大の成果を出す方法」を紹介する。
急成長を可能にする「ゼロリセット思考」
成果を上げるには、常にゼロベースに意識を戻して考える「ゼロリセット思考」を身につけよう。
すでに事業をやっている人も、目の前の事業をやりながら「今、ゼロから起業するならどんな事業が一番成功しやすいか」を常に考える。
もしそれが今の事業と違うなら、「今の事業を伸ばす」のと「新しい事業にピボット(軌道修正)する」のとで、どちらが短期間で成功するかを考え、速そうなほうを選ぶ。
売上を3倍にする方法
売上10億円の会社を、売上30億円にしたいと思ったとしよう。
多くの人は、現事業をなんとか工夫して伸ばし、売上30億円にしようとする。
だが、「ゼロリセット思考」で、現事業を30億円にするのと、現事業をいったんリセットし、ゼロから起業して売上30億円の会社をつくるのとでは、どちらが速く達成するかを考えるべきだ。
今のように頻繁にイノベーションが起きる環境なら、旧態依然の事業を10億円から30億円に伸ばすより、ゼロから時流に乗ったビジネスに参入したほうが速いかもしれない。
これまでのやり方を捨て、新しいやり方に乗り換えたほうが速いことも多い。
私は元々カニやメロンなど北海道の特産品のネット通販事業を行っていた。
あるとき、友人の会社が「定期購入モデル」のビジネスで大成功していた。
そこで、私もその友人に定期購入ビジネスについて教えてもらい、実践しようとした。
定期購入とは、ユーザーに商品を継続購入してもらう販売形態だ。
最初は、既存事業の延長線上で、北海道の特産品の詰合せをつくり、頒布会(毎月その月の旬の特産品の詰合せを届けるサービス)で定期購入を促そうとした。
だが、さまざまな食品を集めて一度に送るのは難しく苦戦していた。食品ごとに管理すべき温度帯や賞味期限が違うからだ。
あっさり親の事業から身を引き、
急成長した女性の話
なかなか難しいのであきらめそうになったが、その頃、父親の事業を継いだある女性に出会った。
彼女は私と同時期にその友人に定期購入について教えてもらっていた。
彼女は突然、自分が継いだ事業からあっさり身を引き、「ゼロから立ち上げる」とダイエット商品の定期購入事業を始めた。
すると彼女の新規事業は急成長し、当社の売上をあっという間に抜き去っていった。
それを間近で見て、北海道の特産品で定期購入をやり続けるのではなく、新しい定期購入に向いた商品をつくったほうが速いと実感した。
そして、オリゴ糖を原料にした健康商品を扱うようになったのだ。
その商品で定期購入ビジネスを始め、そこから数年で当社は上場企業になった。
このように、成果を上げるには常に「ゼロリセット思考」を習慣化する。
「成果を出したい」のか、「今の仕事をしたい」のかを常に意識するといい。
「今までやってきたから」というだけで現事業に固執する必要はない。
サンクコスト(埋没費用)にふりまわされてはいけない。
サンクコストとは、過去に払ってしまい、もはや取り戻すことができない費用だが、将来の意思決定をする際、サンクコストは考えずに、今後の損益だけを考えるのが合理的な判断となる。
未知なる可能性にアクセスする呪文
「自分への問いかけ」
単に「現事業をやめてピボットする」というと、とてもドライに聞こえるかもしれない。
でも、事業とは、世の中に価値を提供することだから、
「自分が最も世の中に価値を与えられる事業にシフトしたほうが世の中のためだ」
と考えてみる。
私が事業主体を北海道の特産品から健康食品に変えたとき、知り合いの中には「儲かれば何でもいいのか!」と言う人がいた。
そのとき私は、北海道の特産品より健康食品のほうが売れるということは、健康食品のほうがお客様に喜ばれ、世の中に役立っていると実感していた。
お客様は役に立つものにお金を払う。
売上はお客様にどれだけ喜ばれたかということ。
お客様に一番喜んでもらえる仕事に自分の力を集中する。
「常にゼロベースで考える」という「思考アルゴリズム」をインストールし、常にこう問い続けよう。
「今のやり方が最も世の中に価値を提供できていると言えるのか。
もしかしたら、もっと大きな価値を提供できる別の方法があるのではないか」
(本稿は『時間最短化、成果最大化の法則』の一部を抜粋・編集したものです)