「終電ギリギリまで残業しているのに仕事が終わらない人」が、「必ず定時で帰るのに成績No.1の人」に変わるためには、どうしたらいいのだろう?
そんな悩みへの実践的な解決策が、『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』では見事に解説されている。
著者は、北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長・木下勝寿氏だ。
本書はベストセラーとなっている、多くの経営者からも評判の一冊だ。TBSテレビ系『がっちりマンデー!!』のSNSでは「食べチョク」秋元里奈代表が、「2022年に読んだオススメ本3選」として本書を紹介した。木下氏は、秋元代表にとって尊敬する経営者の一人だという。
そこで本連載では、多くのビジネス書を読み、経営の勉強をしてきたという秋元代表に、『時間最短化・成果最大化の法則』の活用術を教えてもらうことに。自身も著書『365日 #Tシャツ起業家』でその仕事論を綴った秋元代表は、先輩経営者の思考術をどう読み解いたのか。最終回は、「仕事の壁にぶつかったときの対処法」を聞いた。(構成・川代紗生)

仕事の壁にぶつかったとき、三流は「逃げる」、二流は「乗り越える」、では一流は?

壁にぶち当たったときの「一流」の発想法

──スポーツ選手や起業家、クリエイターなど、「一流」と呼ばれる人は、非常にストイックな印象があります。

 そんな生き方に憧れる人も多いと思いますが、「ストイックな仕事人」に共通するマインドは何だと思いますか?

秋元里奈(以下、秋元):ストイックな人は、自分自身を「ストイック」とは感じていないと思います。

 私もこれまでさまざまな経営者にお会いしてきましたが、共通する考え方としては、「目の前の壁」の捉え方だと思います。

──壁があらわれたとき、どう対処するか……ということでしょうか。

秋元:時間最短化・成果最大化の法則』の中に、「壁は乗り越えられる高さでしか現れない法則」があります。

 大きなトラブルが発生するなど、乗り越えるのが到底難しそうな壁が目の前に現れたとき、一流の人はどんな捉え方をするか? というテーマですが、木下社長は、「壁はその人が乗り越えられる高さで現れる。なぜなら壁の高さは、あなたと社会との相対性で決まるからだ」と綴っています。

たとえば「10億円の借金」という壁が現れたら乗り越えることはできるだろうか。
おそらく多くの人は無理だろう。
でも、大丈夫。そういう人にはそもそも「10億円の借金という壁」は現れないのだ。
なぜかというと、10億円の借金を抱えるということは、誰かがあなたに10億円を貸してくれるということ。
そもそも10億円の返済能力がない人に、10億円を貸してくれる人は現れない。(P153

──言われてみれば、「壁の高さは社会との相対性で決まる」という考え方は、これまでしたことがなかったです。

「壁」ではなく「一段が異常に高い階段」

秋元:さらに、木下社長は、壁を登るときのマインドについて、こう書かれています。

実は壁に見えていたものは、一段が異常に高い階段なのだ。
だから、今まで階段を登ってきたような足の運びでは絶対に登れない。
おもいっきりジャンプしたり、ロープを使ったり、誰かに支えてもらったりして、よじ登らなければならない。
そして、登ってみて気づくのは、それは壁ではなく階段の一段だったということだ。(P154)

秋元:ストイックな人は、このように、ポジティブな発想の転換がうまいのだと思います。

 だから、結局のところ、「いかに目の前のことを楽しめるか」に尽きるのかもしれません。

 「ストイックになりたい!」と、時間をひたすら費やすだけでは、心身をすり減らしてしまうので、目の前のすべての出来事を「ワクワク」に転換できるといいですよね。

──たしかに、ストイックな人は、どんな小さなことからでも学びを見つけたり、チャンスにつなげたりするのがうまいですよね。

秋元:誰でも、好きなことなら夢中になって、無限にやっていられるじゃないですか。

 ゲーム好きな人は、寝食忘れてゲームに没頭します。その状態を、どうすれば仕事でつくれるのか? 考えてみるといいと思います。

「自己効力感」が仕事のワクワクを生む

──このような、ポジティブな考え方をするには、どこから始めるといいでしょう?

秋元:「自己効力感」を上げること。つまり、「自分の努力が仕事の結果につながっている」という実感がとても大事だと思います。

 「やらされ感」がある限り、仕事に「ワクワク」は訪れません。

 上司の指示をやるにしても、ただいわれたとおりこなすのではなく、日々のルーティンワークを仕組み化し、上司にいわれたら5分でアウトプットを返せるようにする。

 そういうふうに一つひとつの仕事の目標を、自分で決めるのが大事だと思います。

 上司が決めた目標をそのままやるのではなく、「私はこれを達成するぞ」と、自分と約束をするのです。

 木下社長も、「三流は壁を避ける。二流は壁を乗り越える。一流は壁を楽しむ」という言葉を紹介されていましたが、まさにそのとおりだと思います。

 期待しすぎて、身近なところからチャンスを見つけられないままだと、仕事もつまらないまま。でも、ありとあらゆることをチャンスだと考えると、すごくワクワクするし、どんな仕事でも夢中になって楽しめますよ。

──なるほど! ちょっと視点を変えるだけで、目の前の仕事もずっと面白いものに見えてきますね。

秋元:本書に書かれている習慣を少しずつ取り入れていくだけで、ずいぶん変わると思います。

 木下社長は、すごく尊敬している経営者の一人で、いつも書籍の内容を参考にさせていただいています。ただ、『時間最短化・成果最大化の法則』は特に共感するところが多く、新入社員や若い人たちに読んでほしいと思うところばかりでした。

 仕事の基礎を学びたいという1年目社員から、「後輩の指導方法に悩んでいる」という10年目社員まで、多くの学びがある一冊だと思います。