2013年3月6日、伊勢丹新宿本店がリモデルグランドオープンします。前編では、2012年9月頃より段階的にリモデルをしてきた同店の店舗環境づくり懸ける思いと、それを受けてどのような売場コンセプトで再開発したのかをお伝えしました。今回の後編では、伊勢丹新宿本店の各フロア別のMD(マーチャンダイジング)について、より詳しくお伝えします。

伊勢丹の最大の強さはMD力にあります。今回の伊勢丹新宿本店のリモデルには同社のMDに対するこだわりが随所に表れています。何を強化して、何を提案しようとしているのか。また、新しい売場分類への取り組みにも着目して、伊勢丹新宿本店が目指す「世界最高のファッションミュージアム」の全貌を明らかにします。

ファッションミュージアムの提供する
5つの価値

「ファッションミュージアム」とは、次のような店のことです。

「ファッションをアートととらえ、美術館・博物館での作品を目で見て感じることに加え、触れる、聞く、味わうなどの五感に訴える環境空間を、マーチャンダイジング(MD)や仕掛け、サービス、環境などと連動させて構築する」(同社広報資料より)

 この五感に訴えるMDで、5つの提供価値を創造しようとしています。その「5つの提供価値」とは次のようなものです。

【伊勢丹新宿本店の考える5つの価値】
①MD    最旬・最上・最先鋭  伝統とモダンの融合
②仕掛け   アート性・独自性を持つ最旬・最新の情報発信
③サービス  ひとりひとりのお客様のためのサービス(パーソナルサービス)
④環境    MD・仕掛けと連動した認識性・回遊性・デザイン性の高い感動空間
⑤展開分類  ファッション×ライフスタイル

前編でお伝えしたようなハード面での斬新な取り組みに加え、各フロアの展開商品やブランドの編集にも特徴を持たせ、さらにその展開分類にライフスタイルという視点を取り入れているのが特徴です。

 では、フロアごとの特徴的な試みを整理してみましょう。

【地下2階】クリニックも入店!
女性を美しく健康にするフロア

伊勢丹新宿本店リモデルが覆す“百貨店の常識”<br />なぜ年齢別の売り場づくりを止めたのか【後編】地下2階「BeautyApothecary」

 まず2012年9月に早々とオープンしたのが、地下2階の「BeautyApothecary」(ビューティアポセカリー)。アポセカリーとは「調剤薬局」という意味です。女性を内と外から美しく健康にするフロアを目指しています。ナチュラルやオーガニックな食材から、書籍までを品揃えしています。女性の悩み解決の「ケア」だけでなく、これからも美しく健康に生きる心と体をつくる「予防」を提案しています。ここが従来の化粧品売場とはコンセプトが異なる点です。

 自然派ワインや旬の野菜などを提供するカフェ&デリ、美と健康をテーマにした書籍のコーナーなどがあります。また、スパサロンや女性による女性のためのクリニック「女性ライフクリニック新宿(婦人科・内科)」が入店しています。これまでの百貨店では考えられなかった構成です。