『週刊ダイヤモンド』9月16日・23日合併号の第1特集は「大学 『年内入試』を完全攻略!」です。推薦を主体とした「年内入試」シフトが進み、大学受験に地殻変動が起こっています。選ぶ大学を見極め、年内入試を攻略するすべをお届けします。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美、ルートマップマガジン社取締役・編集長 西田浩史)
年内入試へ逃げる
親に気力がない
大学入試に地殻変動が起きている。推薦を主体とする「年内入試」へのシフトが進み、推薦入試の入学者数が一般選抜入試の入学者数を上回るようになったのだ。

年内入試には、自己推薦で受ける総合型選抜、高校からの推薦で受ける学校推薦型選抜、付属・系列校からの内部推薦などがある。これらの推薦入試は年内に行われるため「年内入試」と呼ばれる。
年内入試のメインプレーヤーは受験難度で中下位の大学。一般選抜では入学者が集められず、年内入試がメインになっているのだ。これが早期決着したい受験者側のニーズと合致し、年内入試シフトは進んできた。
「早期決着したい」というのは受験者側の逃げでもあり、その戦犯が親であることが少なくない。6年前の中学受験で燃え尽き、30年前の実体験を引きずり、大学受験をサポートする気力がないのだ。
現代の受験は昔以上に親の意向が子供に影響する。教育熱心な多くの親が、子供の中学受験を経験している。「親の受験」ともいわれる中学受験の合否で燃え尽き、大学受験で再び身を削ることから逃げたくなってしまう。
また、30年前に自身の大学受験で地獄を味わった者は、同じ経験をさせたくない親心も働き、「かえるの子はかえるだから」と早々に諦める。しかし、親が受験したのは受験人口がピークを迎えた頃。入試倍率10倍、20倍が当たり前だった。対して今は1倍、2倍が当たり前で、親の時代とはギャップがある。
「当時でギリギリ『日東駒専』(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)というレベルの受験者がタイムスリップして今受験したら、『早慶』(早稲田大学、慶應義塾大学)に十分チャレンジできる。それくらいのギャップがある」と河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員。「『MARCH』(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)あたりは狙える」と別の予備校関係者も言う。
年内入試で攻める
チャンスを増やす
「かえるの子はかえる」ならば、子供は早慶・MARCHに合格できる可能性があるということ。しかも「入りたいところをちゃんと目指せる時代。親の世代は第1志望受験のチャンスは1回だったのが、今は何回かある」と駿台予備学校入試情報室の城田高士部長は言う。こうしたギャップを埋めずに楽な進学を促すのは、もったいない話である。
年内入試自体は、第1志望に受かるチャンスを増やす。年内、年明けと受験回数を増やせるし、入試形式にバリエーションがある。しかも国公立大学を含め、上位の大学で年内入試に力を入れるところが増えてきた。逃げるのではなく、攻め手にできるのだ。
ここで大事なのは「第1志望はどこなのかということ」(駿台予備学校入試情報室の畑迫亮室長)。強い意志がなければ、早めに合格した大学で「折り合いをつけてしまう」(同)。チャンスが増える分、第1志望の合格までモチベーションを保てるかが肝要になる。
ところで、同じ大学の一般選抜と総合型選抜はどちらが受かりやすいのか。
培った学力で合否が決まる一般選抜と、学力では測れない将来の伸びしろなどが評価に入る総合型選抜は、難度を比較できるものではない。それでもイメージはつかみたいところだ。次ページでは、全国約300塾への聞き取り調査に基づいて現在の難度を序列化し、さらに10年後の難度を予想した。