親子関係の問題は、家庭という閉鎖的な空間で生じるものだからこそ、解決が難しいといえます。
外部の目には一見、理想的な家族に見えていても、実はその中にいる当事者にとっては地獄に等しい親子関係であるケースも多々あります。そして自身の異常な親子関係の体験を訴える当事者に、外部の人は信じてくれないどころか「そんなことを言う、あなたのほうがおかしい」と、さらに傷を深くえぐるような言葉を投げかけてくることさえあり、当事者は自分の苦しみが理解されることはない、とあきらめ、口を閉ざすしかないという現状があります。
自分にとって「害になる親」、つまり毒親からは逃げるしかない、とは言われますが、実際に毒親との絶縁は簡単なことではありません。絶縁してもなお追いかけてくる毒親、周囲からの残酷な言葉……ここでは実際に毒親と絶縁した経験を持つ著者が自身の体験を綴った『幸せになるには親を捨てるしかなかった』から、再構成して紹介します。
本書では絶縁までの道筋だけでなく、これまであまり語られることのなかった親との絶縁後に起こった実体験も生々しく語られています。
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絶縁しても、痛みは続く
私は毒家族と縁を切ったあと、思いもよらなかった様々な現実を突きつけられました。
絶縁後、新しく手に入れた自由に対する歓喜と、決断を後悔する気持ちとの間で心が揺れるのは至って普通のことです。
絶縁後は、自由を手に入れた喜びと、精神的な檻から逃げ出し家族を裏切ったという罪悪感と疑心との間で心が揺れ、苦しむでしょう。
ですが、どうかこの矛盾に気づいてください。
そもそも、先に裏切られたのはあなたのほうです。
あなたが何をしようと、裏切り者はあなたではなく家族のほうです。
それでも、誰しも家族と絶縁したあとは、家族を裏切ってしまったんじゃないかという考えにさいなまれ、心の中で闘うことになるのです。
毒家族から解放されたあとはきっと、自信が湧いたり、なくなったりという感情の起伏を経験するでしょう。
まずは、もしかしたら自分は本当に家族が言うような卑劣で最低な人間なんじゃないかという、心の奥底にある恐怖が顔を覗かせます。それから、家族を〝ないがしろにする〟ことで、バチが当たるのではないかと怖くなるかもしれません。
それでも、正常に機能しない家族との間にはっきりと線を引き、自分を尊重する決断を下せたならば、それまで感じたことのない強い力が自分の中に湧き起こるのを感じるでしょう。
絶縁したからといって問題がすべて消えてなくなるわけではありません。新たな問題は次から次へと降ってくるでしょう。
しかし私や私のクライエントたちを含め、多くのサバイバーの人生は、時間が経つごとに良くなっていきました。そしてあるとき気づくのです。
自分を精神的に虐げる家族と縁を切ったからといって、家族という存在に焦がれる気持ちがなくなるわけではないのだと。
私たちは、かつての自分が得られなかった理想の家族を求めるのです。
家族とは、あなたを守り、一緒にいて安心でき、同じ仲間だと思えるような存在でなければなりません。家族は何ものにも代えがたい存在であり、他の場所や人間関係で全く同じ存在を得ることはできないでしょう。
そしてどんな人にとっても、家族関係は総じての幸福感のもとになる必要不可欠なものです。家族との関わりを失うと、自分が無防備で不安定になったかのように感じるでしょう。
たとえ家族の近くが安全な場所でなかったとしても、家族はあなたの根本にあり、あなたを形作る重要な存在だったということです。これまであなたの知るすべてだったのですから、当然のことです。
ですから、家族と絶縁したあとの人生は、未知との遭遇の連続であることを覚悟してください。
とてつもなく大きな変化に順応するには時間がかかります。家族のことで頭がいっぱいになる日もあれば、全く思い出さない日もあるでしょう。
それは至って普通のことです。
しかし、血が繋がっていようといまいと、縁を切ったからといって家族との関わりが完全に消えることはありません。
現実に関わりがなくなろうと、感情的、そして精神的な面で関わりがなくなることはないのです。
