ブラジル経済や通貨レアルは底入れも財政悪化、インフレ再燃など懸念材料山積みPhoto:PIXTA

ブラジル経済は回復を続け、インフレも頭打ちしてきた。しかし、原油市況などの高止まりでインフレ再燃がくすぶる上に、ルラ政権のバラまきによる財政悪化の公算が大きくなるなど、懸念材料は山積みである。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

物価上昇と通貨安抑制のために
累計10%を超える大幅利上げ

 ここ数年、ブラジルでは、歴史的な大干ばつが頻発したため、電源構成の大宗を占める水力発電の稼働率が低下し、代わりに火力発電の再稼働を余儀なくされてきた。

 さらに、昨年以降はウクライナ情勢の悪化を理由とする商品市況高騰も重なり、エネルギー価格の上昇に直面した。

 コロナ禍からの景気回復の動きを追い風とする雇用回復による賃金インフレに加え、昨年の国際金融市場においては米ドル高が進み、その動きに伴う通貨レアル安は輸入インフレにつながった。こうしたさまざまな要因が重なったことで、インフレ率は大きく上振れした。

 中央銀行は物価抑制を目的に一昨年3月にコロナ禍後初の利上げに動いたものの、政府が景気下支え策を目的にさまざまなバラまき政策に動いたことで、インフレ圧力は収まらなかった。その後も中銀は、物価と為替の安定を目的に断続的かつ大幅な利上げを余儀なくされた。

図表:政策金利の推移