メキシコ「高過ぎるペソ」の苦悩、景気底入れも移民送金目減りで内需の足かせにPhoto:PIXTA

米中摩擦の激化などにより生産拠点のメキシコ・シフトが進んでいることもあり、メキシコの景気は回復に向かっている。しかし、インフレ抑制のため大幅な利上げをしたことで通貨ペソの相場は7年半ぶりの高水準となり、移民送金の目減りなどその弊害に悩まされつつある。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

インフレ抑制のため
大幅利上げを断行

 財輸出の約8割を米国向けが占め、GDP(国内総生産)の約4%に上る移民送金の大宗が米国からの流入であるなど、メキシコ経済は構造面で米国の影響を受けやすい。

 ここ数年、米国を市場とする製造業企業は、米中摩擦の激化やコロナ禍、ウクライナ情勢の悪化を受けて生産拠点をアジアから米国周辺に移す『ニアショアリング』の動きをみせている。なかでもメキシコは米国と地続きの上、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)も追い風にし、海外からの投資流入の動きが活発化している。

 その一方、同国はコロナ禍による供給制約に加え、商品高による食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とする物価高、通貨ペソ安による輸入インフレが重なる形でインフレが高進してきた。

 その後もコロナ禍の克服が進む一方、経済活動の正常化を受けた雇用回復による賃金インフレがインフレ率のさらなる上昇を招いた。よって、中央銀行は物価抑制を目的に2021年6月に利上げに踏み切るとともに、その後も物価と為替の安定を目的にFRB(米連邦準備制度理事会)と足並みをそろえる形で継続的、かつ大幅な利上げを実施してきた。