「こども未来戦略方針」などについて首相官邸で記者会見を行う岸田首相「こども未来戦略方針」などについて首相官邸で記者会見を行う岸田首相=6月13日 Photo:Anadolu Agency/gettyimages

「こども未来戦略方針」
少子化に強い「危機感」

 岸田文雄首相が掲げた「異次元の少子化対策」を具体化する「こども未来戦略方針」(以下、「方針」と略す、注1)がまとめられ、閣議決定された。

 子育てへの包括的な支援は、国家がインフラなど公共事業を重視する20世紀型の「公共投資国家」から、人的資本投資を重視する21世紀型「社会的投資国家」に転換する動きを象徴するものとみることできる。

 さらにその財源調達の決着の仕方は、21世紀の日本の税財政を左右する重要な転換点にもなり得る。

「方針」は冒頭、「少子化は、我が国が直面する、最大の危機である」との一文で始まり、きわめて強い危機感を表明している。

 若年人口が急激に減少する2030年までに少子化を反転できなければ、それ以降はもはや人口減少を食い止められなくなると指摘し、いまが反転に向けたラストチャンスだと強調する。

 この認識は正しいし、目玉として掲げられた児童手当の大幅拡充などで子育て支援の現金給付では「OECDでもトップ水準」が実現されるのは確かだ。

 だが具体策を盛り込んだ「加速化プラン」には最も重要で基本的な理念と政策が抜け落ちている。

 その結果、肝心の出産や子育てを躊躇したり断念したりしている人たちの助けにならないのだ。