オーナーシップが明確な会社は、
変化も起きやすい。


藤野 川鍋さんは日本交通の3代目社長ですが、ご自身がタクシー運転手を経験して、その奮闘の様子を本に書いて出版されましたよね(編集部注:『タクシー王子、東京を往く。―日本交通・三代目若社長「新人ドライバー日誌」』)

 日本交通のタクシーに乗った時に乗務員の方とお話すると、「社長が自分たちと同じ仕事をしたことがある」という気持ちのつながりは相当なものだと感じます。すごいロイヤリティになっていますよ。川鍋さんの生き方や考え方は、多くの乗務員やお客さんにも伝わっているのではないかと思います。

瀧本 日本交通が100%オーナー会社に近かったというのも大きかったと思います。オーナーシップがはっきりすると、会社のブランドが一貫するんです。中小型株を見るとわかりやすいのですが、オーナーの意思が明確で理念が会社の精神になっていると、それが買われるんですよね。オーナーシップが明確な会社は、変化も起きやすい。

藤野 まさに、僕も同じことを感じています。僕は中小型株投資の専門家ですが、最近は「大企業を見る時も、中小型株と同じ視点で見て間違いない」と思うようになっています。

 以前は、多くの人が「経営者のリーダーシップは中小企業のほうが重要で、組織マネジメントが近代化するに従って社長の位置づけは低くなる」と考えていました。しかし、僕がこの5年ほど真剣に大型株の投資をやってみて感じるのは、「大企業こそリーダーシップが大事だし、社長が代われば変化することも多い」ということなんです。

瀧本 私は、非凡なパフォーマンスを生む企業は非凡な変化を起こす会社であり、非凡な変化は非凡なリーダーシップによって生まれると思っています。大型株というのは、普通は平凡なパフォーマンスしか挙げませんよね。それは大企業にリーダーシップないから。「2期4年をつつがなく過ごせればいい」という経営陣のもとで、非凡なパフォーマンスが生まれるはずはありません。

藤野 アベノミクスで株価が上がったからといって日本がよくなるわけじゃないんですよね。安倍総理のやったことは否定しませんし、変化を起こしたことはすばらしいと思います。しかし、今は企業サイドにボールが投げられて、企業がどう打ち返すかという局面に来ているんじゃないかと思います。

 そこで問題になるのがリーダーシップなんです。「日本の経済再生」と言うときにリーダーシップの話をする人は非常に少なくて、デフレとか金利とか為替の話ばかり。それらももちろん大事ですが、僕は個別企業のリーダーシップにもっとフォーカスすべきだと思います。

 一般的に「オーナー経営=ワンマン経営」とネガティブなイメージがあるようですが、そこにリーダーシップがあれば、オーナー経営のほうが業績も株価も伸びているんですよ。【「サラリーマン社長」の会社は成長が期待できない】という法則は本にも書きました(編集部注:「儲かる会社、つぶれる会社の法則」)。