子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では、船津氏のこれまでの著書から抜粋して、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。
競争を避けると、強みは育ちきらない
強みを育てる上で極めて重要なのが「競争」です。
ただ家庭でピアノをコツコツ練習するだけでなく、人前で演奏をしたり、ピアノコンクールに出場するなど、競争をする経験によって強みは磨かれていきます。
競争に参加することで、子どもは「自分はどの部分が優れているのか」「何が足りないのか」を知ることができます。
サッカーの試合に出れば、ドリブルがうまい、足が速い、パスが正確、キープ力が強いなど自分の強みに気づくことができます。
同時にもっと練習して正確さを高めなければならないことを自覚できるのです。
また人前でパフォーマンスを披露したり、楽器を演奏する経験は、プレッシャーのかかる場面で実力を発揮する力、本番に強くなる力を育ててくれます。
競争をたくさん経験している子どもは、日頃の練習においても実戦を意識できるようになります。
本番の演奏会や試合をイメージしながら練習していれば、同じ練習をしていても、周囲の子どもとは習熟度が違ってくるのです。
反対に、「本番に弱い」「実力を発揮できない」という子どもは、競争経験が少ないのです。
場慣れしていないからプレッシャーに負けてしまいます。
また、普段の練習でも本番をイメージしておらず、「ミスをしてもやり直しが利く」という潜在意識が働くので、もともと才能があったとしても、伸び悩んでしまうのです。
結果は二の次。本気を出すことに価値がある
ただし、競争をさせるということは、イコール一番でなければいけない、ということではありません。
子どもに競争はさせても、親は勝敗にこだわってはいけないのです。
子どもが100%自分の力を出し切ったのであれば、負けても、それは勝利と同様に高く評価することが重要です。
「やるからには勝たねばならない」と勝敗へのこだわりが大きすぎると、子どもに恐怖心や不安感を植えつけてしまい、実力を発揮できなかったり、競争を楽しめなくなったりします。
また、勝つためのプレーに偏るようになり、長期的視野で子どもの技能を高めることができなくなることが多いのです。
健全な競争心を育てるためには、どのようなレベルで競うにせよ、両親が「全力を出し切ればよい」という姿勢を保つことが大切です。
日本の競争には、高校野球のトーナメントに代表されるように「絶対に負けられない一発勝負」という深刻な雰囲気がつきまといます。
しかし、子ども時代の競争の目的は、本気で何かにチャレンジしたこと、自分の力を出し切ることで得られる達成感を味わわせることです。あくまでも人生の勉強なのです。
優勝して一番大きなトロフィーをもらう、敗者となって悔し涙を流す、敗北から再び立ち上がって挑戦し続ける、そんな経験を子ども時代に積むことで、たくましさを獲得していきます。
また競争においては、子どもの技能レベルも重要です。理想は手の届く範囲内の競争。
自分とまわりで明らかなレベル差がある場合、子どもが劣等感を持つ可能性があります。今の実力よりも少し高いレベルで競わせることが理想です。
「きわどい競争」ほど子どもを大きく成長させてくれます。そして、子どものレベルが一段上がったら、もう一つ高いレベルの競争環境に。
さらにそこをクリアしたら、もうワンステップ上へ。これを積み重ねていくと、いつの間にか、ずば抜けて高いレベルへと到達できます。
・競争を経験することで、自分の強みに(自分で)気づける
・競争をすることで、本番に強くなる
・基本スタンスは、「100%の力を出せば、結果は問わない」
・ポイントは、「今よりちょっとレベルが高い環境」を与えること
(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)