ちょっと、LINEのアプリを立ち上げてみてください。あなたは、LINEで打ち込むメッセージの最後に「」をつけていますか?
国立国語研究所の教授が「雑な文章」を「ていねいな文章」へ書き換える方法をbefore→after形式で教える新刊『ていねいな文章大全』から、句点「。」の役割とルールについて紹介します。(構成・撮影/編集部・今野良介)

「。」のない文

文の終わりだからかならず句点「。」をつける。

それが国語の時間で学んだルールですが、現実には句点「。」がつかない文が増えてきています。

たとえば、箇条書きで列挙するときに、ふだん句点「。」を使っているでしょうか。

次のように「。」を使う人もいるでしょう。

【Before】
転職には、メリットだけでなく、次のような給与面でのデメリットもあります。
・転職前より給与が下がる場合がある。
・退職金や企業年金の額が減ることがある。
・退職時期によってはボーナスが支給されないことがある。

その一方で、使わない人も増えてきている印象です。

むしろ、「。」がないほうが事柄を単純に並べている感じが出せて、箇条書きらしくなります。

【After】
転職には、メリットだけでなく、次のような給与面でのデメリットもあります。
・転職前より給与が下がる場合がある
・退職金や企業年金の額が減ることがある
・退職時期によってはボーナスが支給されないことがある

もちろん、句点「。」をつけても問題はないのですが、箇条書きということで、文の終わりを示さなくても読み間違えることはなく、句点「。」が打たれないケースが増えてきています。

(。」)か(」。)か

また、句点「。」なしでも読み間違いが起きにくいという理由で、閉じカギカッコで終わる文の場合も句点「。」が省略されがちです。

じつは、これについては、国語の教科書の慣習と一般の新聞・雑誌の慣習は異なります。

(教科書ふう)
「今週の後半から雨の日が続くでしょう。」と気象予報士がブログに書いていた。
「来週のはじめには台風が上陸するおそれがあります。」
(新聞・雑誌ふう)
「今週の後半から雨の日が続くでしょう」と気象予報士がブログに書いていた。
「来週のはじめには台風が上陸するおそれがあります」。

教科書は閉じカギカッコのまえにかならず句点「。」をつけるルールがあります。

一方、新聞・雑誌の場合、引用の助詞「と」の前は句点「。」なしのカッコだけでよく、文の終わりでは、閉じカギカッコのそとに句点「。」を置きます。また、改行を前提として会話が続く場合は、箇条書きのときと同様に句点「。」をつけなくても大丈夫です。

このように、学校教育対応か実社会対応かによって句点「。」の打ち方は異なりますので、注意が必要です。

なぜLINEでは「。」を使わない人が多いのか

なお、打ち言葉と呼ばれるスマホで送られる文字情報では、文が終わっても句点「。」がつかないケースが増えています。

とくに、LINEでのやりとりでは句点「。」をつけるとかえって冷たい印象を与えます。

会話というキャッチボールでは、お互いの話を切らずに続けていくことが大事であるのに、句点「。」はそれを強く切ってしまう働きがあるからです。

なぜ、LINEで「。」を使わない人が多いのか自分のLINEを見直してみよう。

LINEの場合、漫画と同じように吹き出しのなかに言葉が書かれますので、吹き出し自体が文という単位を担っており、吹き出しに入れることで句点「。」をつけるような働きがあります

そのため、そこにさらに句点「。」を入れてしまうと屋上屋を架す重複感が生まれてしまうと考えられます。

拙著『ていねいな文章大全』ではこのほかにも、正確で、わかりやすく、配慮のある文章の書き方を豊富に紹介しています。