日本語が「消滅の危機」にある理由、世界で9番目に話されているのになぜ?日本は、自ら進んで、小学校の低学年からの英語教育に乗り出しました。よほどの覚悟を持って日本語の将来を守らなければ、いつの間にか英語の国になっている可能性もあります(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「日本語が消滅する」と聞いたらどのように感じるでしょうか?日本語研究の第一人者で埼玉大学名誉教授の山口仲美さんは「世界のあちこちで民族固有の言語が消滅しているように、油断をすると日本語も消滅する」と危惧しています。実際、「2週間に1言語のペースで衰退しつつある言語の最後の話者が死んでいる」と言われています。なぜ、日本語は消滅の危機にあるのでしょうか。『日本語が消滅する』(幻冬舎新書)より紹介します。

消滅の予兆

 日本語が消滅する?そんなことあるわけないでしょとお思いになった方も多いでしょう。でも、油断をすると、日本語も消滅するのです!世界のあちこちで、その民族固有の言語が消滅しているのと同じように。

 ご存じのように、日本では、2020年から、小学3年生からの英語教育が始まりました。未来を背負う子供たちが、自国語を十分にマスターしないうちに、英語教育を始めることは、将来的にその国固有の言語の衰退を招きます。日本語学者の宮島達夫さんも指摘しています、「小学校への英語導入という決断をするには、日本人が将来英語モノリンガルになる第一歩になるかもしれない、という覚悟をしておく必要があります」と。

 小学校への英語導入という決断は、最初のうちは、母国語である日本語とのバイリンガル(=二つの言語を話せる人)を生み出しますが、やがて世界共通語の英語のみを話すモノリンガル(=一つの言語のみを話す人)になっていくということが分かっています。あ~あ、日本語はもうお終(しま)いかもしれない。そんなに遠くはない将来を思って、私は愕然としました。母国語のとりかえが起こり得る事態に一歩足を踏み込んでいるのです。