ヒットの障壁は既成概念
変人扱いされても貫く信念
お土産菓子の会社では、伸び悩む和洋菓子店をリブランディング。そのなかで、池田氏が関わったのは、「ザ・メープルマニア」だ。ベージュのパッケージの中央に、笑顔の男の子が描かれているお土産品で、東京駅や羽田空港で見たことのある人も多いだろう。ここにも、池田氏のこだわりが詰まっている。
「お土産は人に渡すもので、複数人で食べることが予想されます。そのため、お土産にメッセージ性や語りたくなるストーリーを持たせた方がいいと思ったんです。そこで、ブランドのイメージを体感できるオリジナルソングとダンスをつくり、スタッフとお客様が一緒に歌い踊るイベントを立ち上げました。お菓子のおいしさだけではなく、メープルの甘い香りが漂う幸せな気持ちを味わい、人に伝えたくなる仕掛けにしました」
これ以外のブランドの運営も手掛けた池田氏は、入社2年で5ブランドの売上高を175%も伸長させたのである。同社を退社後は、百貨店などでお菓子販売を手掛ける会社に入社。いわゆる、デパ地下のケーキやクッキーの販売に従事する。
「アンリ・シャルパンティエなどのブランディングや販促施策を統括していました。ここでは、売り場自体を楽しくするような工夫をしました。例えば、イースターの時期ならウサギのシールをウィンドウに貼って、ウサギを追いながらケーキを見られるような仕掛けを作りました。ただきれいに並べるだけではなく、ちょっとでもお客さんが、というか私自身も楽しく商品を選ぶことができたらいいなという思いでしたね」
こうした実績を引っ提げ、池田氏は2018年に現在のアサヒコへ入社するのだが、これまでの成功の要因をこう話す。
「商品開発やマーケティングにおいて、最大の障壁は既成概念だと思います。業界や会社全体が当たり前だと思っていることとは反対側に、お客さんのニーズがあるということは少なくないと思います。ただ、私自身は専門的な知識はなくて、いちユーザーとして、一番欲しいものやワクワクしそうなものを純粋に形にしただけなんです。それが業界の常識から外れていたとしても、結果的に私と同じようなことを思っていた人が世の中にはたくさんいました。いくら社内でボロクソに言われても、変人扱いされても、自分の純粋な思いを信じることが重要なんだと思います」