「会社に対する不満が蔓延している」、「なぜか人が辞めていく」、「社員にモチベーションがない」など、具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、近年話題の「組織開発」というアプローチだ。組織開発では、「対話」を通してメンバー間の「関係の質」を向上させていく。そんな組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介したのが、『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)だ。本記事では、発売後即重版となった『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』の出版を記念して、目に見えない組織の悩みに対して、経営層を巻き込みながらどのようにアプローチしていくかを考える。
経営層が職場の改善活動に消極的な理由とは?
早瀬信:大企業の場合は、組織開発に取り組むことを上層部に認めさせる、という高いハードルがあります。
社員の時間をかなり使う活動ですから、それに対する投資判断は非常に難しいものです。しかも多くの場合、「なんでこんな忙しいときにこんなことをしないといけないんだ」という“やらされ感”が組織全体に起きる。トップはそれが怖いんです。
企業で組織開発をおこなう際には、そういう反応に対して、理屈ではなく「忙しいときほどやるべきですよ」と単純な言い方をしていました。くどくどと説明してしまいがちですが、言い切るのがコツなんです。
高橋妙子:組織の変容には時間がかかるし、成果を数値化しにくいという点で、上層部の無理解、投資判断など、組織開発を始める際には、現実的な問題は常に存在しますよね。ですから、「できるところから、始めて良い」と思っておくと気が楽だと思います。
組織開発は、「どうもこの状態はいかん」と誰かが感じ、そう感じているのは一人や二人ではない、というところから動き始めます。
人と人との関係性を通して共感を広げていくような活動なので、隣の一人に「そうだよね、私もそう思う」と言ってもらえると始まりやすいと思います。
チームづくりで言えば、まずは無理やりにでも、どこかに「集まる場所」をつくってみるのも良いでしょう。オンラインでも良いと思います。
瀬山暁夫:大切なのは、組織を良くしたいという「意志」である点も強調しておきたいですね。手法ありきではなく、変革を始めようとする人たちの思いや意識から始まるという点です。
(本原稿は、『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』の内容を抜粋・編集したものです)