包括的性教育を大人が学ぶ必要
女性の場合、「女子だけで集められて生理について教えられた」という経験を語る人は多い。女性の場合、日本での「性教育」は「生理」の記憶とともに語られる。
生理は楽しい話題ではないが、初潮を迎える年齢の女子にとって必要な知識であるため、恥ずかしくても、恥ずかしいと言っていられないところがある。ナプキンの使い方や生理痛の対処、その時期の過ごし方の注意点、あるいは血のついてしまった下着の洗い方、経血が漏れても目立たない服の色の選び方など、実務的な内容を女性教師から教えられた人もいるだろう。
一方で男子の場合、初潮と対比されるように「精通」が教えられる。精通や射精についての体の仕組みを知ることはもちろん必要だが、それを教師から教えられることに抵抗感のある男子も多かったのではないか。
2023年の現代では、1990年代やそれ以前とは性に関する教育も変わっている。しかし大人たちの中には、過去の気づまりだった「性教育」経験を思い出し、こんなものに意味はないと言いたがったり、ちゃかしたりする人がいるのではないだろうか。
ここ数年の「包括的性教育」(生理や精通あるいは妊娠や生殖のメカニズムだけではなく、人とのコミュニケーションの取り方や同意の意味、性にまつわる多様性やコミュニケーションを通じた幸福感など幅広い内容を含む性教育)の議論の中で繰り返し言われるのは、児童・生徒・学生だけではなく、大人にこそ「包括的性教育」が必要だ、ということだ。
セックスの方法や、自分が何によって性的興奮を覚えるかは知っていても、性交渉を行う相手との「コミュニケーションの取り方」を学び考えたことがある大人は少ないだろう。今の大人が子どもの頃、それは学校で教えることではなく、それぞれが独学で身に付け、なんとかなるものだ、ということになっていた。
しかし、なんとかなっていないことは、デートDVの深刻化やいまだに低くならない中絶率、性的同意を取り違える事件などによって明らかだ。今回のように、大人が高校生に諭されるような事態も、それを物語っている。
前述のJB press記事の中では、甲南女子大生のこんなコメントも紹介されていた。
「ネットの中には男性の嫌なところや悪い面ばかりが書かれていて、私もそういうものなのかなと思っていたのですが、実際に触れてみて、そうではありませんでした。やっぱりネットの情報は偏っているんだなと感じました」
この学生の言うように、ネット上で一部の大人たちがひどい暴言を吐いていたからといって、もちろんそれがすべてではないし、リアルでは着実に良い方向に包括的性教育が広まっているかもしれない。
とはいえ、ネットがリアルとつながっていることも事実である。リアルでは言えないような下品な言葉を、誰もが見るSNS上に書き込めば、それなりの反発は受けるだろう。