インフレ退治に向け追加利上げの可能性と高金利継続を示唆するFRB。背景には米国景気の強さがある。大規模緩和を継続する日本銀行とは対照的だ。米利下げ時期の遅れにより円高反転も後ずれしそうだ。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
日米の金融政策の方向性の違い
改めて浮き彫り
円の対ドルレートが150円に迫っている。9月25日に一時1ドル=148円97銭を付けた。2022年10月以来のドル高円安水準である(下図参照)。背景には、9月19日、20日のFOMC(米連邦公開市場委員会)と21日、22日の日本銀行の政策決定会合で、両者の金融政策の方向性の違いが改めて浮き彫りになったことがある。
FRB(米連邦準備制度理事会)は、政策金利であるFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標水準を5.25~5.5%(中央値5.375%)に据え置いた。
しかし、FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は「われわれは(インフレ抑制のために)追加の引き締めが必要であるかを慎重に検討する」と述べ、追加利上げの可能性を示唆した。
FOMCで公表されたドットチャート(FOMC参加者がFF金利についての予測値を示したもの)が示す23年末の中央値は5.625%と、前回6月と同水準。これは、年内にあと1回の0.25%の利上げを実施することを意味する。そして、最も市場にインパクトを与えたのが、24年末の中央値が4.625%から5.125%に引き上げられたことだった。
6月時点ではFF金利が年内にあと1回0.25%引き上げられた後、24年末までに4回(1回は0.25%)引き下げられるとされていたのが、2回の計0.5%の引き下げに修正されたのである。利下げ時期が後ずれし引き上げられたFF金利が高止まりする期間が長期化することを示す予想である。
理由は米国景気の想定以上の強さだ。23年4~6月期のGDP(国内総生産)成長率は前期比年率換算で2.1%と、1%台後半とされる潜在成長率を上回った。今回のFOMC時のSEP(経済・物価見通し)では、23年10~12月期のGDP実質経済成長率予測値が前年同期比2.1%(6月は1%)と大幅に上方修正された。24年10~12月期も1.5%(同1.1%)と引き上げられた。
雇用も底堅い。8月の非農業部門の雇用者数は前月比18.7万人増と16万人台だった市場予想を上回った。SEPの23年、24年の失業率見通しも下方修正された。